
こんにちは!ビズキャンプラス運営の畠中です。
今回は、磁界式センサーとAI技術を駆使し、農業分野において「見えないものを見える化」する革新的な技術を展開する株式会社Henry Monitorの代表 小松隆史様へのインタビューとなります。
今回のインタビューでは、事業内容や起業に至った経緯、偶然の出会いから生まれた土壌分析への応用、そして学生へのメッセージまで、多岐にわたる貴重なお話をお届けします!
「農業DX」や「AI」、「アグリテック」などに興味のある方、必見です!
会社概要
会社名:株式会社Henry Monitor
代表:小松 隆史
所在地:長野県諏訪市四賀2333-1 K-Lab
事業内容:磁界センサーを活用した土壌分析・金属検査システムの開発・販売
インタビュー

(鈴村)
事業概要を教えてください。
(小松さん)
Henry Monitorという会社は、磁界を使ったセンサー技術を活用している会社です。磁界というのは磁石から出る磁束線のことで、例えばそばに金属が近づくと磁石がくっついたりしますよね。そういう信号を取って、土の状態や金属の状態を検査しています。
会社名の「ヘンリー」は、1850年代にこの磁界を発見した、アメリカのジョセフ・ヘンリーという方から来ています。ちょうど同じ時期にイギリスのファラデーという方も磁界を発見していたんですが、我々のターゲット市場はアメリカということで、ヘンリーの名前をとりました。
私たちがやっていることは、「見えないものを見えるようにする」ことです。磁界って見えないですよね。電波もそうですが、それをうまく数字に置き換えることによって、人が理解しやすいようにする。例えば土の成分や、金属の種類の状態はパッと見ても分からないけど、それをセンサーで見えるようにする。見えるようになると安心でき、「この製品は大丈夫ですよ」ということにつながる。そのようなことををお手伝いする会社です。
(鈴村)
見えないものの中でも、土壌に注目したきっかけはありますか。
(小松さん)
初め、土壌には全く注目していませんでした。私自身は金属の研究者で、2001年から諏訪の小松精機工作所という会社で、金属の結晶を小さくする技術の研究開発をしててきました。当時は、一つのサンプルの結晶を見るのに30万円かかり、なおかつ一晩中検査機を回さないといけなかった。時間もお金も、人にもすごく負担がかかるんですよね。何とかいい方法はないかと模索していたら、この磁界を使う方法が見えてきました。
当初、このデバイスは非常に大きくて、重さが5キロから10キロくらい、センサーも1つ1キロありました。それを製造現場で使えるようにもっと軽くしたいと、長野県や諏訪市の補助金を活用し、プレゼンテーションをしていました。
たまたま評価委員の方が信州大学の農学部の先生だったんですが、私たちの装置と原理は、「土壌分析に使えるはずだ!」と言われまして、測れるわけがないと思いつつも貸したんです。そうしたら、どうも土で違う信号が出てくるという連絡が来て、土の分析に有効だと分かったんです。
(鈴村)
具体的にはどういった場所で活用されるんですか。
(小松さん)
農家さんや農業法人さんですね。農業法人さんでは全国で土の分析をやっていますが、土一つの地力を分析するのに、1サンプルで大体2日から3日かかっているんです。しかも、分析に化学的な溶液を用いているので、排液も出る。
我々の方法を使えば、15秒で終わります。
(鈴村)
すごく画期的ですね。土壌分析と作物の関係性についても教えてください。
(小松さん)
なぜ土の分析が必要かというと、土の栄養分が足りないと作物が育たないからです。作物を育てると、その分だけ土の養分は消費されてしまう。だから秋に一度測定して、次の春までに必要な養分を補っておく必要があります。
日本にはまだまだ農地がいっぱいありますが、それを1サンプル2日かけてやっていたら分析しきれないんですよ。現状では、畑の四隅と中央から土を採取し、それを混ぜて1つのサンプルとして分析する方法が一般的です。実際には、畑の中でも場所ごとに土の状態は大きく違うのに、結果として均一な畑として扱われてしまうんですね。
その結果に基づいて肥料をまくと、ある場所では肥料が過剰になり、別の場所では不足する。これでは生育にばらつきが出て、精密農業ができないんです。
しかも、サンプル一つを測るのにだいたい2万円ぐらいかかるんですが、農家が負担しているのは1300から3000円ほどです。残りは分析会社が肥料の販売で補っている側面もあります。ただ、その結果として肥料をまきすぎ、連作障害も起きているケースが全国で見られます。
もし多くの地点を測定できるようになれば、畑をエリアごとに把握できます。例えばここはマグネシウムが足りない、ここはリンが足りないと分かるようになる。葡萄ではマグネシウムが不足すると葉が早く落ち、トマトではリンが不足すれば成長が遅れたりもします。
夏が暑い年はリンの消費が激しく、途中で不足するとトマトが急に成長できなくなり、枯れてしまいます。そうした兆候が分かれば、適切なタイミングで肥料を与えることで防げるようになります。

(鈴村)
起業に至った経緯を教えてください。
(小松さん)
もともと小松精機工作所は、腕時計や自動車部品を手がける会社です。セイコーエプソンさんの腕時計部品や、自動車の燃料噴射部品では世界シェアの約4割を占めています。表に出ることは少ないですが、ニッチな分野で強みを持つ会社ですね。
ただ、部品を作る強い企業文化があっても、センサーや測定器に関しては得意分野じゃないんです。技術は開発したけど、それをどうやってお客さんに届けるかを考えたときに、より効率的な方法を考え、新たに会社を立ち上げました。
私自身の経歴で言うと、東京電機大学の工学部を卒業した後、イギリスのロンドン大学で工学系出身者向けのマネジメントコースに進みました。もともと起業には興味があったので、ネタがあればやろうと思っていました。起業の仕方も知っていたので、大変だったという思いはないです。
もう一つは、この会社以前に、2013年にナノ・グレインズという別の会社を立ち上げているので、「作っちゃえば」という感覚でいった部分もあります。
(鈴村)
現在新卒を採用していないようですが、その理由はなんでしょうか。
(小松さん)
表に出していないだけで、積極的な方は、募集を出さなくても来られるので(笑)。
(鈴村)
学生時代にやっておいてよかったことはありますか。
(小松さん)
一つは、トラックの運転手のアルバイトですね。4トントラックも運転していて、当時はバブル期だったこともありかなり稼げました。
良かったのが、輸送の仕方、輸送コストを学ぶ機会になったことです。トラックの中は物が動くので、梱包の仕方も結構勉強になりましたね。色々な機械も運んでいたので、そういう会社の方とお知り合いになれたのも、非常に良かったですね。
もう一つは、学生食堂でのアルバイトです。そこで料理を覚えたことが、後になって意外と役に立っています。海外の方と一緒に合宿をしたり、シェアハウスで過ごしたりする際に、和食が振る舞える。それ自体がコミュニケーションになり新たなプラスアルファになっていくというところがいいですよね。
学生時代に日本をもっとよく知っておくといい、それが文化的に食事と結びついていると、とても楽しい思いができますよ。
(鈴村)
大学生の時からモチベーション高く続けられた理由はありますか。
(小松さん)
学生時代はずっと運動ばかりしていて、真面目に勉強したのはむしろ社会人になってからです。体力だけで乗り切ってきたところはありますね。私はとにかく、現場に行く、その人に会いに行くタイプです。自分の感覚でどう感じるのかを大事にしていました。基本的には行動ありきなんですよね。
周りからはモチベーションが高く見られていたかもしれませんが、自分としてはそういう意識はあまりなかったと思っています。
(鈴村)
今後のビジョンをお聞かせください。

(小松さん)
今後進出していきたい領域としては、やっぱり医療機器関係や農業関係、工業もやっているところですが、基本的には今ある世界を伸ばしていくことがまず一つかなと思っています。
もう一つが、今まさにこの世界のものづくりが変わる節目にあることです。
トランプ政権の動きや、中国でも習近平政権の政策を見ていると、これからは現地で全部生産し現地で全部完結するという形にシフトしていくと思っています。そうなった時、どんな生産方式や検査になるのかを見極めて、そこに関わる分野に進出したいと考えています。
(鈴村)
構想はあるけど起業に踏み出せない学生が意外と多いと感じていて、小松さんが踏み出せた一歩の理由がすごく気になります。
(小松さん)
踏み出せた理由は、お客さんがもういたってことですよね。
(鈴村)
そこにお客さんがいるかどうかを見極める方法はありますか?
(小松さん)
人に会いに行くしかないですよ。その声を聞けない環境にいるうちは、起業してもうまくいくわけがないです。
ただ、そのお客さんが「安いから」買っているのか、「付加価値があるから」買っているのかは、きちんと見極めなきゃいけません。単に今よりコストが安いという理由ならばレッドオーシャンに突っ込んでいくのと同じなので、やらない方がいいと思っています。
基本的にブルーオーシャンを狙いますが、実際にお客さんが一人もいなかったというケースもあります。
(鈴村)
その場合はどうしているんですか。
(小松さん)
無理に一気に投資するのではなく、環境が整うまで待つ。どれくらい待てるかは、扱う製品によって全く違います。材料系なら、10年から15年は待つ覚悟が必要です。一生のうちに一つ事業化できれば、それで万々歳という世界なので。
ITやゲーム分野は、ニーズをつかめば一気に立ち上がることもありますが、あっという間にレッドオーシャン化することがあるので、ものによって違うとは思っています。
(鈴村)
最後に、起業に踏み出せない学生に向けてメッセージをお願いします!
(小松さん)
構想があって起業に踏み出せない学生さんは、ぜひ私のところへ相談に来てください。
「構想を聞いてほしい」というだけで構いません。費用もいりません。ただし5分で何がしたいか話して下さいね。
私は、起業の構想を「少なくとも5人にアプローチしてみなさい」と伝えています。その中で買ってくれそうな人がいたら、それに類似の人を探していく。そうするとお客さんは見えてきますよ。
インタビューを終えて
(鈴村)
今回のインタビューを通して、最も印象に残ったのは「偶然の出会い」の大切さでした。もともと金属検査のために開発していた技術が、信州大学の教授との出会いによって土壌分析という全く新しい分野に応用されることになった。このストーリーは、いろんなところにアンテナを張ることの重要性を教えてくれました。
また、起業に関して「お客さんがいること」が最も重要だというメッセージも印象的でした。ブルーオーシャンを見つけても、そこにお客さんがいなければ意味がない。現場に行って声を聞くという行動力の大切さを学ぶことができました。
小松さんが学生の相談に無償で乗っていらっしゃるというお話も、これから起業を考えている学生にとって大きな励みになると思います。
小松さん、貴重なお話をありがとうございました!
以上、株式会社Henry Monitor代表、小松さんのインタビューでした。
次回もお楽しみに!
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