IT農業を通じて笑顔の人の和を創り社会に貢献する|株式会社笑農和 下村豪徳 様 インタビュー

こんにちは!ビズキャンプラス運営の畠中です。

今回は、株式会社笑農和 代表取締役 下村豪徳様へインタビューさせていただきました。
IoT技術を活用した水田の水管理システム「パディッチ」を開発し、高齢化が進む日本の稲作農業に革命を起こしている株式会社笑農和。
今回のインタビューでは、事業内容やサービス開発の背景、起業時の困難とそれを乗り越えた原動力、そして学生へのメッセージまで、多岐にわたる貴重なお話をお届けします!

「スマート農業」「IoT」「社会課題解決」「起業」などに興味のある方、必見です!

 

会社概要


会社名   株式会社 笑農和
代表取締役 下村 豪徳
住所    富山県滑川市中川原347 KAKIAMI 201
設立年月  2013年2月14日
事業内容  IoT技術を活用した水田水管理システム「パディッチ」の開発・販売
URL    株式会社 笑農和 

 

インタビュー


(福田)
ビズキャンプラスの学生に向けて、どのような事業を展開しているか教えてください。

(下村さん)
私たちは、お米作りをテクノロジーでアップデートしています。現在、米農家の平均年齢は69歳、その方たちが全体の7割を占めています。この人たちが辞めていくと、米づくりの主な作業のひとつ、水管理に非常に大きな負担がかかります。水管理とは、水田で田植えをしてから稲を刈るまでの4〜5ヶ月、毎日田んぼの水を見回って、少なければ水を入れたり、多かったら水を抜いたりする作業です。

そこで、IoT技術を用いて、田んぼに行かなくても「今田んぼに水が入っているか」や、「何センチぐらい入っているのか」、それに加えて「水温はどのくらいなのか」を、全て手元のスマートフォンやタブレット、パソコンでデジタルデータで見えるサービスを作り、遠隔で水管理を行います。それがパディッチという遠隔水管理システムです。

例えば、「夜中の12時に水を入れ6センチぐらいになったら止めたい」という作業をセンサーと連動することで、現地に行かず遠隔で自動化できます。。24時間稼働なので、非常に楽なうえに、ベテランの技をそのままシステム化できるので、お米にとっても良い。農家さんの救世主でもあり、お米の品質・収量アップにも貢献できる事業をしています。

(福田) 
パディッチを取り入れると、作業効率はどれくらい上がるのでしょうか

(下村さん) 
米づくりの4分の1は水管理に時間を取られているという背景があります。これは農家の方にも負担が大きく、米づくりを辞めてしまう要因にもなっていました。パディッチを導入することで、水管理にかかっていた時間の80%程が削減できます。

(福田)
社名の「エノワ」が「笑う」「和む」という字が使われていて、素敵だなと思ったのですが、社名に込められた思いについて教えてください。

(下村さん) 
社名を考えるときにいろいろ悩みまして、今はスマート農業という単語がありますが、うちが創業した時はまだなくて、当時はIT×農業と呼んでいました。そのため、「IT農業を通じて笑顔の人の和を作る」という企業理念を立てて、その思いを体現するため、理念の漢字3文字をとり笑農和という名前にしました。

(福田) 
ホームページで「農業の発展には異業種とのコラボレーションが必要」という言葉を拝見させていただきました。このように考えられている理由について教えてください。

(下村さん) 
この事業を通じて、農業が閉鎖的な業界であることを実感しました。外から入ってくる新しいものに対して、強い抵抗感を持つ傾向があります。特に高齢の農家の方ほど、長年培ってきた経験があるがゆえに「常識の壁」が厚くなっており、そこから一歩踏み出そうとする方は決して多くはない。

また、そうした業界の構造に甘んじているメーカー側の課題もあります。現在、農機メーカーといえば大手4社ほどしかいないのですが、果たして大手企業だけで変革し続けることができるかといえば、いずれ限界が来ると考えています。そこで、ロボットメーカーをはじめとする異業種がこの分野に参入することで、既存のメーカー側も新しいアイデアを出さなければ市場を奪われるという危機感が生まれ、活性化に繋がります。農業を変えていくためには、多様な企業の参入や、異業とのコラボが必要であると感じています。

(福田) 
これまでに下村様が農業をされていて、ITを取り入れていく上で一番大変だったなと思うことと、それを乗り越えるためにしたことを教えていただきたいです。

(下村さん) 
事業を立ち上げる中で直面したのは「水管理」の大変さです。私自身、幼少期の経験や米作りを継いだ弟の姿を通じ、水管理の過酷さは身に染みて理解していました。しかし、それを解決するための製品を作ろうとしたとき、「理解者が一人もいない」というスタートがありました。

農家の方々に利便性を伝えても、「お前は農家の仕事を奪うのか」と怒鳴られたこともあります。毎日田んぼへ足を運び、稲の様子を見て判断することこそが農家の仕事なので、自宅にいながら管理できるような製品に対して、否定的な反応がありました。
開発の現場でも、何度も門前払いを経験しました。工場を回っても「そんなものはニーズがない」と断られ続け、協力してくれるパートナーすら見つからない。

それでも私が折れなかったのは、将来この技術が間違いなく必要になるという確信と、亡き祖父の姿があったからです。私の祖父は脳梗塞で倒れ、右半身に麻痺が残る体でした。ある日私が祖父に会いに行くと、自宅療養しているはずの祖父が田んぼに出て草を刈っていて、そこで会話した1週間後に亡くなりました。
祖父は昔から「ここはダメだったから来年もっとおいしいお米を作ろう」「来年はここを改善してみよう」と、ずっとチャレンジし続ける人でした。私が農家のためと言いながら、なかなか前に進めなかった時期に、祖父は諦めずに死ぬ直前まで田んぼに立っていた。「絶対にこれはやり切るぞ、世の中に出し切るぞ」というモチベーションで、どんな壁があっても乗り越えることができました。

(福田) 
実際にサービスを導入されてから、お客様からはどんな声を多く寄せられますか。

(下村さん)
パディッチを導入して、まず楽になったと言われます。最初はみなさん、半信半疑です。「本当に田んぼに行かなくてもいいのか」みたいな。最初の頃は、スマートフォンを操作してから30分後に、実際田んぼに行くくらい心配な様子でした(笑)。7年経った今では、70歳のおじいちゃんが、家の目の前の田んぼですら玄関先からスマートフォンで操作しているくらいです。

本当に使いこなしている人は、4日に1回ぐらいしか田んぼに行っていないのに、周りの農家さんよりも収量が高かったり、4年連続で7〜10%収量が上がった農家さんも出てきています。
ベテランの農家さんでも、手作業のノウハウをデータに落とし込むことで雑草が抑えられ、通常だと除草剤を3回巻くところが1回で良くなったなど副次的な効果も多く、満足いただいています。

(福田) 
これから新たに力を入れていきたい領域はありますか。

(下村さん) 
一つはAIですね。今、水管理で成果を上げているユーザーさんは非常に多いです。
ですが、川上に田んぼがあった農家さんが水管理に成功してたくさん水を使用したゆえに、川下に水が少なくなって収量が落ちたかもしれない。
これはいちユーザーや一つの農業法人だけのデータではわかりませんが、その地域全体でパディッチが入れば、全体の水の状態が見えるようになります。その場合、人ではなく、AIが地域全体の最適な水管理をすればより収量を上げられるのではないかという仮説があります。

もう1つは、異業種の企業による農業への新規参入です。そういった企業を伴走支援でお手伝いして、最先端のスマート農業を変革していきたいと思っています。

(福田)
下村様が大事にされている価値観はありますか。

(下村さん)
挑戦です。右か左か迷った時には、難しい道を選ぶようにしています。

例えば、10人に相談して、「そのビジネスめちゃくちゃいいよ、絶対儲かるよ、やった方がいいよ」という人が10人いたとしたら、競合が多く、新規性もないのと、価格競争に陥りがちなので、あまりやらない方がいいと思っています。むしろ「そんなの儲かるわけないよ、絶対やめた方がいい、失敗するよ」という反対派が9人いて、1人が「いけるかも」というビジネスの方が、苦難だけど世の中のインパクトは大きい。
それが世の中を変革するところにつながることもあると思います。


(福田)
下村様は学生時代の頃からそういう挑戦ができるタイプでしたか。

(下村さん) 
そういった意味では、何かしらとりあえずやってみるタイプでした。
ただ今のように、本当に苦しい時に挑戦を選べたかというと怪しいですね。そこはやはり祖父が亡くなった経験や、確信的な思いが背中を押してくれているからですね。

(福田) 
学生時代にやっていたから今に活きていることはありますか。

(下村さん) 
趣味でバンドをしていたので、とことん凝って突き進むところや、人前に出たりという経験は、起業家になってピッチやプレゼンをするときに活きているかと思います。

また私の場合、誰かの死に対しての意味付けを大切にしています。
学生の時には、友人を2人亡くしました。1人は交通事故で、もう1人はがんでした。
今私が生きているのは、何か使命があるからだと思っています。農家に生まれて、今IT農業事業をやっている。何のためにこの命があるのかを考えた時に、自分がやってきたことは、絶対無駄がないと思っています。

(福田) 
これから思い描く農業というものがあれば教えていただきたいです。

(下村さん) 
これは賛否両論ありますが、おそらくロボットと共存する農業になると思います。
統計として、高齢者が農業を辞めていき、農家一人当たりの栽培面積は増えています。現在、我が家では弟が東京ドーム3個分(15ヘクタールぐらい)を1人で担当しています。ここが1人の農家が管理できる面積の限界だと思います。弟も、一部の田んぼを手放さざるを得ませんでした。

さらに、農林水産省の統計から予測される未来はさらに過酷です。
今後、高齢化により農家の7割が引退し、残る担い手がわずか3割となった場合、現在の栽培面積を維持するためには1人あたり「70ヘクタール」を管理しなければならない計算になります。統計上として、限界値である15ヘクタールの約5倍という現実が目前に迫っているのです。

この状況に対応するためには、外国人労働者の受け入れや企業の参入に加え、ロボット技術の活用が不可欠です。24時間稼働し続けるロボットに工程を分散させることで、人間一人が抱える作業負担を物理的に軽減していく。また、管理面積が拡大すれば、農地はさらに広範囲に分散します。一番遠い田んぼまで20キロ離れており、車で移動するだけで往復1時間近くかかる。
だからこそ、現場へ行かずにデータを確認でき、遠隔でロボットを動かす「リモート農業」への転換が必要だと思います。

(福田) 
農業や起業、社会問題の解決に興味を持つ学生にメッセージをお願いいたします。

(下村さん)
今の日本は不安要素が多いと思います。でも日本が生きていくには、若い世代が、社会に出て何かを起こしていく必要がある。
社会課題を解決していかないと、その課題を次の世代に引き継ぐことになるので、課題を解決していくことが未来の日本を作ると思ってもらって、ぜひアンテナを立てて欲しいです。どんな小さな社会課題でもいいから見つけて、それを解決できるアイデアを出してほしいと思います。

 

インタビューを終えて


(福田) 
最初はITと農業はどう関連があるんだろうと考えていましたが、インタビューを通して農業の現状などをたくさん学ぶことができました。さらにこれからロボットやAI、ITがこれからも関連していく必要があると勉強になりました。
これからもっと社会課題に目を向けて、私自身もそれを解決できるような学びをしていきたいと思います。

(畠中) 
少し前までは、農業×技術というと、品種改良などのバイオテクノロジー的なイメージが強かったですが、最近のスマート農業やIT農業は、農作物の環境を整えていったり、自動化していったりして、農作物のポテンシャルを引き出すトレンドになっている気がしています。これは地球にとってもいいことだと思いますし、農業分野はすごく前向きに進んでいるのではないかと感じました。

 

以上、株式会社笑農和代表、下村豪徳様へのインタビューでした。次回もお楽しみに!

この記事は私達が担当しました

  

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