行動から始まる成功への道|オーシャンソリューションテクノロジー株式会社 水上陽介様 インタビュー

こんにちは!運営の泉田です。

 今回の経営者インタビューはオーシャンソリューションテクノロジー株式会社代表取締役の水上陽介様です。

 「この国を守る人を、護り続ける」を目指し、水産業に関わるソフトウェアの企画・開発・運営を通して、持続可能な次世代の水産業の実現を目指している「オーシャンソリューションテクノロジー株式会社」。平均年齢60歳を超えている水産業界に対し、日本国内はもちろん、世界に水産DXの取り組みを広げています。

 今回のインタビューでは、水上様の失敗に対する捉え方や「悩んでいる学生」へのアドバイスなど、メッセージがたっぷり詰まった記事になっています。

ぜひご一読ください!

 

会社概要


会社名   オーシャンソリューションテクノロジー株式会社
代表    水上陽介
住所    長崎県佐世保市有福町203-1
設立年月  2017年12月
事業内容  ソフトウェアの企画・開発・運営および関連するサービス
      ソフトウェアの受託開発と海中センサー製造販売
URL    オーシャンソリューションテクノロジー株式会社 

インタビュー


それではインタビュースタートです。

(泉田)
まずはビズキャンプラスの読者に向けて、御社の事業内容について教えてください。
(水上さん)
 私たちは、衛星データと非常に親和性の高い水産業界において、衛星データを活用しながら水産DX、海洋DX、スマート水産業の社会実装に取り組んでいる企業です。もともとは、私の祖父が創業した佐世保航海測器社という会社が母体です。海上自衛隊の艦船に搭載するジャイロコンパスなど航海・光学機器の保守整備を行う会社で、私はそこの3代目にあたります。そこから第二創業という形で、2017年にオーシャンソリューションテクノロジーを設立しました。

(泉田)
事業の強みについて、教えていただけますか?
(水上さん)
 私たちの最大の強みは、漁船の航跡データからAIが操業実態を自動で把握する技術です。スマート水産業を進める上で、漁業者さんの操業実態を把握することは非常に重要です。よくあるのは、漁師さんにアプリで操業開始・終了や回数などを入力してもらうツールですが、80歳の漁師の方にスマホ操作を覚えてもらうのはハードルが高い。
 私たちのシステムは、船の航跡からAIが自動で「いつ、どこで、誰が、どのように漁をしたか」を判断します。この情報は、水産資源の管理や評価においても極めて重要です。漁師さんにとっては、DX導入のために何かを変える必要がなく、自分たちの資源を次世代に繋ぐという意識で協力してくれる方が増えています。この自動取得された操業データと、漁協や市場に記録される水揚げデータ(何をどれだけ獲ったか)を紐づけることで、漁獲報告といった法律で義務付けられている作業も、日時レベルで自動化できます。さらに、このデータを研究機関が資源評価に活用し、TAC(漁獲可能量)のような管理措置を、より実態に合ったものにしていく流れが見えてきています。

(泉田)
新しい事業を立ち上げ、軌道に乗せるまでには多くのご苦労があったかと思います。特に大変だったこと、そしてそれを乗り越えるために工夫されたことは何でしょうか?
(水上さん)
 最初は私たちも漁師さんにスマホアプリで入力してもらう方式を試しました。もちろん、事前にマーケティングや現場ヒアリングはしっかり行いました。ただ、今思えば、ヒアリングできたのは私たちの取り組みに元々興味を持ってくれている、一部の人たちだけだったんです。
 その結果、2021年に5県10地域で大規模な実証を行ったのですが、リリース直前で「こんなものは使えない」と、散々な評価を受けました。おそらく、多くのスマート水産系スタートアップがここでつまずくのだろうと思います。でも、私個人として「できない」というのが嫌いです。「できない」と「やらない」は違う。そこで、なぜ使えないのか原因を徹底的に追求し、「どうすれば課題をクリアできるか」を考え抜きました。そして、航跡データからAIが全てを判断する、今のシステムの開発へと舵を切った。この決断が非常に大きかったと思います。

(泉田)
漁師さんからの反応はいかがでしたか?やっていてよかったと感じる瞬間や、嬉しい反響があれば教えてください。
(水上さん)
 特に嬉しかったのは、最初に「これは使いづらい」と言っていた方々が、「もっとここをこうできないか?」とか、「表面海水温だけじゃなく、水深ごとの潮流も知りたい」といった具体的なアイデアを積極的にぶつけてくれるようになったことです。これは、私たちの取り組みを評価してくれている証だと感じています。
 水産業界はよく「参入障壁が高い」「鎖国文化的だ」と言われます。新しいものを受け入れにくい、小さなコミュニティです。そこに、私たちのような中小スタートアップが入り込めたことは、当初から狙っていたことでもあり、非常に大きな成果だと感じています。どんなに良い技術を持っていても、大手が本気を出せば飲み込まれてしまう可能性があります。しかし、この「鎖国文化」的なコミュニティに入り込むことで、逆に大手とは違う方法で、コミュニティ同士を繋ぐといった役割を担うことができる。これが私たちの強みになると考えました。実際に、漁業者さんと対等に話せるようになったことは本当に嬉しかったです。
 漁業者さんは今、本当に疲弊しています。以前、ウォルマートが日本の水産業界に参入しようとして撤退したことがありました。これは、地域ごとの複雑な文化や流通構造を変えるのが非常に難しかったからです。もしデジタル化だけで解決できるようなシンプルな業界だったら、大規模資本に全てひっくり返されていたかもしれません。
 私たちが展開している海外の途上国でも、大規模資本に弱い立場に置かれがちな漁業者さんが多くいます。彼らが対等に交渉し、ビジネスとして自立できるよう、私たちはデータプラットフォーマーとして、地域コミュニティを守りながら支援していきたい。そうした関係性を築けていることも、やっていてよかったと感じる点です。

※ウォルマート:アメリカ合衆国アーカンソー州に本部を置く世界最大のスーパーマーケットチェーンであり、売上額で世界最大の企業

(泉田)
水上さんご自身の学生時代についてお伺いしたいです。どのような学生生活を送っていましたか?
(水上さん)
 私はずっとサッカーばかりやっていました。あとは、小学生の頃から空想するのが好きでした。「こうしたらこうなるな」「もっとこうすればいいのに」と、人のことを見ながら頭の中でシミュレーションしているようなタイプでした。気づいたら、大学も入学式と最初の授業だけ出て、「これは違うな」と思い、1日で辞めるという判断をしました。
 周りから見れば思いつきに見えるかもしれませんが、自分の中では、それまでずっと頭の中で考えていた(PDCAのようなものを回していた)結果なんです。空想の中では色々シミュレーションしますが、結局は「まずやってみる(Do)」ことが重要だと考えています。机上の空論では見えてこない課題が、行動して初めて現れる。
 ある程度のリスクを排除したら、分からないことに対して悩む時間はもったいない。まず動く。動いた先に出てきた課題に対処していく方が、圧倒的にスピードが速い。事業を絶対に失敗したくないという思いが強すぎると、なかなか最初の一歩を踏み出せない人が多いですが、踏み出した人間が先行者利益を得られるのは強く感じますね。
 だから社員にも、「新しいチャレンジでの失敗は全然OK。思い切ってやってほしい」と伝えています。もちろん、ある程度のリスクヘッジは必要ですが、ゴーサインを出したことに対する失敗を咎めることはありません。むしろ、その失敗は必ず経験となり、会社の財産になると考えています。

(泉田)
「まず動く」「失敗は財産」という考えに至った、具体的な実体験やエピソードがあれば教えていただけますか?
(水上さん)
 一般的なことですが、動かない人間は失敗しませんよね。でも、それでは何の積み上げもない。私は動いてきたから、失敗もたくさんしてきました。でも、失敗というのは、私にとってはただの「つまずき」でしかない。その経験を踏まずに、いきなり成功する人なんて絶対にいません。成功に向けてチャレンジし、失敗を積み重ねた先に、やっと成功があると感じています。
 人生経験の中でも、たくさんの失敗が今の自分を形成していると思います。その失敗をどう受け止めるかが大切です。大学を1日で辞めたのだって、周りから見れば大失敗かもしれません。でも、そのおかげで早く社会に出て揉まれ、行動できる人間になれた。それが、今こうして新しい事業に抵抗なくチャレンジできていることに繋がっている。全ては受け止め方次第ですね。

(泉田)
失敗をポジティブに捉えるというのは、なかなか難しいと感じる人もいるかと思います。特に就職活動などで失敗して落ち込んでいる学生も多いと思うのですが、何かアドバイスはありますか?

(水上さん)
 就活で失敗するなら、「『日本一の就活失敗者』になれ」と思いますね。それくらいアグレッシブに動き回ればいい。そこまで就活で失敗した経験というのは、絶対に財産になります。そもそも、就活で落とされたことを「失敗」と感じるのは、内定をもらうことがゴールになっているからではないでしょうか。
 社会に出たとき、「会社」というのはあくまで自分の夢を実現するための「手段」として使っていくべきものです。例えば、「プロサッカー選手になりたい」という利己的な夢だけだと、怪我をした時に心が折れてしまうかもしれない。でも、「プロサッカー選手になって、子どもたちに夢を与えたい」という利他的な夢があれば、プロ選手になることは手段でしかないので、たとえプロ選手にはなれなくても、コーチになるなど他の手段を探せるはずです。
 就活も同じで、「その会社に入って、自分は他者に対してどういう幸せを提供したいのか」という利他的な目的があれば、その手段としての会社は、極端な話、どこだっていいはずです。そういう考え方ができれば、就活で心が折れることも少ないでしょうし、面接で話す内容や熱意も大きく変わってくると思います。

(泉田)
学生のうちに経験しておいた方が良いこと、若いうちにやっておくべきことはありますか?
(水上さん)
 「思い切った行動」を一度やってみてほしいですね。例えば、最近の大学入試には自己推薦のような制度があります。ある高校生は、実績作りのために、いきなり内閣官房に電話して「長官に会わせてください」とアポイントを取ろうとしたそうです。結局、長官には会えなかったようですが、かなり上の立場の人たちに実際に会って話を聞けたと。そういう、普通なら「無理だろう」と思うような突拍子もない行動に対して、「面白い、話を聞いてみようか」という大人は必ずいます。いきなり社長に電話をかけてみるとか。普通は「できない」と思ってしまいますよね。でも、意外とアポって取れます。自分で勝手に「できない」と壁を作っているだけ。その殻を破るためにも、思い切った行動は一度やってみる価値があります。
例えば、「ホリエモンに直接会って話がしたい」って、できると思いますか?

(泉田)
今のお話を聞いていると、電話してみたら、もしかしたらいけるのかな…?と考えてしまいますね。
(水上さん)
 「できない」と思った瞬間に、できなくなります。今の時代、技術的にも人脈的にも、地球上でできないことなんて、ほとんどないんじゃないかと私は思っています。だから、いかに自分をコントロールするか。ある意味、自己洗脳に近いかもしれませんが、「自分はできる」と思い込んで、思い切った行動を取ってみる。私も大学を辞めてすぐ入った住宅建材の会社で、営業として日光東照宮に電話して「うちの建材のテストをさせてください」って言ったら、OKが出ました。普通は無理だと思いますよね?でも、無理じゃなかった。無理だと決めつけているのは自分自身です。
 大学生だからこそ許される無鉄砲さもあると思うので、思い切ったチャレンジを一度は経験してほしいです。

(泉田)
水上さんご自身が、これまでで一番「思い切ったチャレンジ」だと感じていること、そしてこれからやってみたいチャレンジは何でしょうか?
(水上さん)
 今やっている事業そのものが、常に思い切ったチャレンジの連続ですね。例えばパラオに行った時も、「大統領に会いたい」と言い続けたら、人づてに繋がって本当に面会できました。自分が望んで行動すれば、実現不可能に見えるハードルも、越えていけます。何がそれを阻んでいるのか、行動しないと本当の課題は見えてきません。だから、質問の答えとしては、「毎日が思い切ったチャレンジです」という感じでしょうか。

(泉田)
水上さんが人生をかけて達成したい夢や目標について教えてください。

(水上さん)
 一番の目標は、「海のGoogle」になることです。つまり、海のデータに関する世界的なプラットフォーマーとして、グローバル企業と対等に渡り合えるレベルになりたい。そして、ビジネスとしての目標とは別に、漁業者さんの地位向上にも貢献したい。彼らは魚価の決定権もなく、非常に厳しい状況に置かれています。特に途上国では、外国の大型船に資源を根こそぎ奪われ、生活できなくなった結果、海賊になってしまうという悲劇も起きています。
 そうした、大規模資本に一方的に搾取されるのではなく、対等に交渉できるための「武器」としてのデータを提供したい。プラットフォーマーとして、漁業者さんのコミュニティを守りながら、美味しい魚が持続的に食卓に並ぶ世界を実現していきたいと考えています。

(泉田)
最後に、今まさに就職活動をしている学生や将来に悩む若者に向けて、アドバイスをお願いします。
(水上さん)
 「あの時こうしておけばよかった」と後悔しないように、とにかく行動してください。自分の脳みそで「いや、それは無理だろう」とブレーキをかけずに、まず行動に移す。「できない理由」を探してしまうのは、自分が傷つきたくない、失敗したくないという気持ちの表れかもしれませんが、そういう自分を騙すような行動は避けてほしい。
 思い切ったチャレンジは、周りからバカにされるのが常です。世界を変えようとする人間は、だいたい最初は笑われます。でも、自分がやりたいことに対して、自分に嘘をついていないのであれば、自信を持って胸を張れるはずです。周りから何と言われようと、自分が「楽しい」と思えるチャレンジができている状態は、すごくいいものですよ、と伝えたいです。
 将来の目標としてもうひとつ、まだ計画段階ですが、自社の衛星を打ち上げたいと考えています。私も後悔のない大きな挑戦に取り組んでいきます。

インタビューを終えて


(泉田)
 本日は、ご自身の経験に基づいた貴重なお話をたくさんお聞かせいただき、本当にありがとうございました。失敗を恐れずに行動することの大切さ、そして水産業界の未来にかける熱い想いが伝わってきました。私たちが食べている魚たちは当たり前のものじゃない。だからこそ、これからもより感謝して「いただきます!」と魚を食べていこうと思います。 改めて、本日はありがとうございました。

 

以上、オーシャンソリューションテクノロジー株式会社代表の水上様のインタビューでした!

次回もお楽しみに~

この記事は私達が担当しました

  

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