第10回 「ベンチャー企業に、聞いてみよう!」では、ローソンのフランチャイジーとしては日本最大級のシェアと売上を獲得した株式会社Matchbox Technologies(更新日:2022年3月7日)の佐藤社長にインタビューさせていただきました。
概要
株式会社Matchbox Technologies
代表者 : 佐藤 洋彰 様
資本金 : 1000万円
設立 : 2004年11年
事業内容 : コンビニエンスストア「ローソン」のメガフランチャイズビジネスを中心とした事業
事務所 : 本社 〒950-0945 新潟県新潟市中央区女池上山3-14-10
Q1
(三谷さん) ベンチャー企業で働くことは、大手企業で働くことと何が違うとお考えですか?
A1
(佐藤さん)僕は就職したことがないから、ちょっとよくわかんないけど簡単に言ったら、自由度です。大手だとある程度仕組みがもうできているからその中に入って完成されたものを武器にして目的を果たしていくのが仕事ですが、ベンチャー企業は、何も決まっていないところから自分たちで素材を集めてみんなで目的を果たさなければなりません。ベンチャーは失うものが少ないぶん、失敗するリスクよりも、目標達成できないリスクのほうが高いかなって思います。
Q2
(河邊さん) 様々な分野にわたって色々なビジネスがあると思うのですが、なぜ今のビジネスを選んだのか理由や動機があれば教えてください。
A2
(佐藤さん)たまたまです(笑)。 決してコンビニ事業をやりたいからやったというわけではないんです。バイトで一番続かなかったのはコンビニですし(笑)。
何をしたいかじゃなくて何ができるかって考えました。学生ベンチャーでやるときって情報も少ないですし、できることも限られているから、くるものを拒まずに食べるみたいな感覚です。僕が起業したタイミングは19歳の大学生の時で、情報もまだまだ限られていましたし、世の中がどうまわっているかもわからなかったです。それでも、とりあえず目の前にできそうな案件があって分野はわかりませんでしたが経営者になりたいっていう気持ちが強くあって、その時にコンビニエンスストア経営という案件と出会ったので、絶対マイナスになることなんてないと考えて、縁があったのでやりました。
(三谷さん)もともと経営者になりたいというおもいがあったのですか?
(佐藤社長)ありました。17歳の時には「なりたい」じゃなく、「なる」と決めていました。自分の性格的に大きな会社の組織に入るのは、合わないとも思っていました。
Q3
(河邊さん)ベンチャー企業を経営するうえで、一番大事なことは何だとお考えですか?
A3
(佐藤さん)志を高く。やっぱりあきらめそうになることもあるんですよ。大手企業のいいなって思うところは、大きいプロジェクトできるとこです。単純に大きいプロジェクトができるっていうのは憧れますよね。でも、ベンチャー企業はその土俵まで自分でもっていかなきゃいけないから所詮私はここで終わりだなって思ったらもう終わりになってしまいます。だから、何があってもふてくされず、あきらめずチャレンジし続けるかが大事だと考えています。
Q4
(伊丹さん) なぜ起業しようと思ったのですか?
A4
(佐藤さん) 自分の性格的に、たぶん就職はできないなと思ったからです。なので高校生の時に自分で会社をつくろうと考えていました。ベンチャー企業でも努力を重ねて、大手の企業と壮大なプロジェクトを描いていきたいと思っていました。今、ようやくですがそういうこともできはじめたのかなって思っています。
Q5
(三谷さん) 企業として成功してきた、その成功への秘訣、あるいはそれまでそんな努力をしてきたのかあれば教えてください。
A5
(佐藤さん) あきらめが悪かったことですかね、成功はまだまだですし、もっとしていきたいです。30代では、もっと自分が納得できる仕事をしたいと思います。小さい案件でも成功を積み重ねていくことが大事です。成功の定義は、自分が納得したかどうかだと思います。
Q6
(河邊さん) もし就職活動をしていたら、どういう仕事を選んでいましたか?
A6
(佐藤さん) やはり男なのでロマンがある仕事ですかね。大きい仕事をたくさんやったり、海外に行ったりなど、色々な経験ができる仕事をしたいなと思っていました。
Q7
(三谷さん) 人材を選ぶ際、どのような点に注目して選んでいますか?
A7
(佐藤さん) 性格がいい人、派閥を作らない人、人の足を引っ張らない人ですね。仮にそうじゃない人を採用したとしても少数派なので、自然と抜けていくような会社になっています。なので、派閥もなく協調性の高いいい会社だなっと思っています。技能よりもやっぱり人間性を重視しています。人間性を磨くところだったり、仕事に対する考え方をきちっとさせていく、そしてそれを素直に受け入れてくれる人を選びたいです。面接のときには、きちんと目を見てはなせているか、笑顔が素敵かどうか、あと、愛嬌があるかどうかも大事なポイントだと思います。
Q8
(伊丹さん) 女性の採用について何か意識している点は何かありますか?
A8
(佐藤さん) 女性はもっと増やしたいです。女性の管理職の人がいる会社は、いい会社だなって感じることが多いです。当社は女性が活躍できる環境をまだまだ作れていないので、そこをきちんとつくっていきたいです。パート・アルバイトは女の子は多いけど、社員になると逆転しています。もっと女性にとって働きやすい環境を作っていかなくてはいけないなと思っています。
Q9
(三谷さん) どこまで会社を大きくしたいとお考えですか?
A9
(佐藤さん) どこまででもですね。単純に店舗数で何店舗までにしたいっていうのは考えていないです。自分がコントロールできる範囲でしか会社って大きくならないから、今の自分の実力が今の店舗数や従業員数だと思っています。だから、会社がどこまで大きくなりますかっていうのは、自分が経営者としてどこまで成長できるのかっていこととイコールだと思います。
なので、自分が成長しないで会社だけが成長していくってことはあり得ないです。事業領域、店舗数だけじゃなく、業種、経済活動をする地域、国というのは、自分の成長と比例すると思っています。そういう意味で言うと、どこまでっていう風に考える年齢でもまだないので、限界は作りません。当然、全国、海外でもやっていこうと思っています。
(三谷さん)社会の流れをみながら分野を決めていく感じですか?
(佐藤さん)ただ、流行に走りたいとは思ってはいません。実態のある事業をやりたいし、サステナブルな事業がやりたいです。「教育」や「人材」といったキーワードには、今とても興味を持っています。あとは、コンビニエンスストアのこれからがどうなっていくのかなっていうのは、すごくイメージしています。少子化はしょうがないけれど、高齢化にはどう対応していこうかも考えていいます。
Q10
(伊丹さん) 将来のために学生生活の中で何かやっておいたほうがいいことはありますか?
A10
(佐藤さん) 小さい成功体験を積み重ねて自信をつけることです根拠のない自信(笑)でも、それってすごく大事だと思います。私は小さいころからこれをずっと意識して、やってきました。自信を持てると、上手くいってなくても自分には光が常に降りてきてるというイメージをもるから、すごく強く守られてるって自分でも思いますし、人運もすごく強いって思え、自然とビジネス上でも必ずいい人と出会えてきました。
付き合ってる人では、「あなたはラッキーですか?」って聞いて、うーんって考える人とは結婚しないほうがいいって言われるんですが、本当にそうだと思います。俺はすごいツいてるって自信持っている人はいいと思います過信している人はだめですけどね。自分の良さも悪さもわかっていて、自分を信用することって大事だと思います。すごく難しい課題が来ても、自分なら何とかなるなって自分を信用できることはすごく大事だと思います。
自分なら会社を起こせると思い実際に作り、ローソンで一位になりたいと強く思って、結果一番大きいオーナーになることができました。フランチャイズのオーナーと本部が合弁組むことなんて考えられないことだったのですが、自分ならできると強く願っていたら合弁を組むことができたし、過去に前例がとかではなくて、自分を信用できるかどうかっていうのが大事だと思います。なんかそう思うと自分の限界なんて決めつけないほうがいいなって思いますよね。
Q11
(三谷さん)フランチャイズという事業内容の利点は何ですか?
A11
(佐藤さん)時間をお金で買えることです。ようするに、自分で今からコンビニエンスストアを作るのは大変ですよねでも加盟してその対価を払うことによって、その時間を買えるということです。それは、利点だと思います。
Q12
(三谷さん)これからも事業を発展させていくと思うのですが、今まで困難に直面したことはありますか?そしてその困難をどう克服してきましたか?
A12
(佐藤さん)困難ばかりですね~。あきらめずにやるってことくらいですね。 少子高齢化が進んできたときに、本部がオーナーの数が少なくなってくると今度はたくさん経営できる人育てなきゃいけないなってなって、その時全国にそういうことやっているのは、当社ぐらいしかなかったんです。当時はもう誰も通常通りのことしていない当社とは関わりたくないって感じでした。
でも結果ローソンは、複数店経営者を支援しますっていう専用の制度までりました。そのきっかけを作ったのは、実は当社なんですよね。そのサンプルになれたことは、うれしいし、実績ができたなって思いました。ベンチャー企業の困難なところは、やっぱり社会的信用がないことです。どう克服するかは、確実に実績を出していって、本当の意味で自分の名刺を作るっていうこと。自分の会社はこういうことができますよって言えることが、本当の名刺だと思います。やっぱり、それを作るしかないのかなって。
Q13
(河邊さん)私は自分の方向性が見つかっていないのですが、どうしたらいいですか?
A13
(佐藤さん)難しいですよね。でも第一にもっと自分との会話が必要だと思います。自分の質にあっているかあってないかってとっても大事なことだと私は思います。自分の質を無視して生きていくのってすごくつらいことです。あなたはどういう人なのかっていうことに対して、素直に答えられることがとても大事だと思います。100問あってそれを100通りの答えを出していけば、自分を知ることはできますよね。でも、これだけではまだ勝率は50%。なぜなら、今度は相手を知らなくてはならないからです。HPに載ってることが本当かは分からないけど、でも調べることは大事です。将来の自分を想像してみて、どんな自分がいたらわくわくするかを考えて、そこから逆算していくと方向性がみえてくると思います。
編集後記
(河邊さん)
わたしが話の中で最も印象に残った部分は、学生のうちにやっておいたほうがいいことについて、小さな成功体験の積み重ねということです。私自身、この言葉を聞いた時なるほどなと思いました。わたしも幼い頃からのささいな成功体験が、今の自分の自信になっている部分もあるからです。まだまだ自分の可能性を信じて、たくさんの小さな成功体験を養っていけたらと感じました。そして今回、わたしは初めて起業するということについて詳しく知りました。
自分のやりたいことに無限の可能性を信じて、どんどん事業を展開していこうとする姿には、圧倒されました。そして驚いたことが進む道は、困難ばかりであるということです。困難があってこそ、それを乗り越える力の偉大さというものは、今の佐藤さんの会社のスケールが物語っていると思います。学生の時に起業しここまで自分の市場を開拓してきた佐藤さん。私は今まで佐藤さんのような人生を考えたことがなかったので、とても刺激的なお話を聞かせていただきました。わたしも自分の本当にしたいことを求めて、時間の許す限り模索し続けたいと思います。貴重な時間を私たちのために割いていただき、本当にありがとうございました。
(三谷さん)
今まで漠然と持っていたベンチャー企業のイメージが、インタビューを通してよりはっきりとしました。既成の車に乗って目的地に向かう大手とは違い、バラバラな部品を集め組み立て車を作り、回り道も近道もしながら目的に辿り着くというベンチャー企業。人材、資本、規模、世間からの信用、目の前に立ちはだかる困難はたくさんあるけれど、可能性は無限大であり、「志高く持って」自分を信じて事業を展開していく佐藤社長の生き方は力強く、これからも、どこまでも成長し続けるベンチャー企業の魅力を存分に感じ取ることができる、そんなインタビューになりました。
<インタビューについて感じたこと> 佐藤社長はとても気さくで、話しやすく、人柄の良さが伝わってくるようでした。質問を投げるタイミング、その答えに対する切り替えしなどまだまだ未熟な点が多く、これからもっともっと上達していかなければと思わされる、課題の多く残るインタビューとなりましたが、なかなかお話の聞くことのできない立場の方にインタビューをすることができ、実りあるものもたくさん得ることができたのでとても良い機会となりました。