「感性を科学する」人間の言葉にならない声、無意識の行動をデザイン心理学に基づき、紐解いていく 株式会社BBStoneデザイン心理学研究所代表取締役日比野好恵様インタビュー

今回は代表取締役の日比野様が、心理学に基づいたコンサルティングとは具体的にどういうことなのかを説明してくださりました、また、今後の展望、デザイン心理学の可能性についての考えをインタビューの中で語ってくださりました。ご自身の経験から語られるストーリーや学生へのアドバイスには言葉で表せない大きな意味がありました。心理学に興味のある学生のみならず、将来に悩む学生にも是非読んでいただきたいインタビューです。

※新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点からオンラインでのインタビューとなっております。

会社概要(2021年8月現在ホームページより)

社名:株式会社BBStoneデザイン心理学研究所Design Psychology Unit (DPU)

設立:2009年7月

代表:日比野好恵

事業内容:デザイン心理学(認知心理学+人間工学+統計学)を活用した、デザイン改善・リサーチ分析・コンサルティング

所在地:千葉県千葉市中央区富士見1-15-9 朝日生命千葉ビル8F

URL:https://www.bbstonedpu.com/company/

(宮本)
まず最初に、御社の事業内容について教えてください。

(日比野 様)
まとめて言うと、人間の言葉にならない声を紐解き、消費者の嗜好やマーケティングの方向性を予測していく会社です。例えばデザインの見やすさ・使いやすさだけではなく、人間の直感、感性、潜在意識についてを実験心理学の手法を応用して科学的に分析しています。この手法は特許を取得しています。

(宮本)
AIの登場により人間だけが持つ感性に注目したマーケティングはこれから更に発展していくと考えていますが、競合となる企業はありますか?

(日比野 様)
意外に無いんですよね。調査会社さんは沢山ありますが、実験心理学の手法を応用して潜在意識まで深掘りできる企業は実はありません。

そんな中で大手調査会社ではなく弊社を選んでいただける理由としては、私自身も不思議ではありますが、人間の行動を決める直感『内臓感覚』を紐解くことができるからではないでしょうか。

弊社のクライアントの90%以上は一部上場企業で、大規模なアンケートやインタビュー、脳科学の手法などを使って様々な調査をしています。

しかし、その結果に従ってマーケティングを進めようとしたにも関わらずうまくいかなかったと。そこで何か解決策が無いかということで弊社にたどり着いたと仰ってくださっています。

従来の調査とは違った、弊社の「言語化できないものを引き出す」という特殊な調査がマーケティングに活かせるということで、高い評価を頂いています。

(伊藤)
御社のwebsite中で空間コンサルティングにより隣の人の声を聞こえにくした業績を拝見しました。そこで生まれた疑問なのですが、自分の理解としては、建築は素材やデザインを駆使し利用する人のニーズに応えるものなのですが、心理学を用いた空間コンサルティングは建築とどのような点が異なるのでしょうか?

(日比野 様)
空間コンサルティングの肝は「音」と「光」です。特別な音を用いコンサルティングを行なっています。光も人間のサーカディアンリズム (生物に備わる昼と夜を作り出す1日のリズム)に基づき細かいコンサルティングを行なっています。

なぜ「音」と「光」が重要なのかというとヴィセラル(内臓感覚)を動かすものは「音」と「光」だからです。

実際に「音」と「光」に基づいた空間コンサルティングの応用例としては、残業を少なくしたいやディスカッションを活性化したいなどの企要望に対して、残業削減などのスローガンを掲げ改善しようとする直接的なアプローチではなく、さりげなく光の度合いによって帰宅を促すことをデザインの観点からしています。

(伊藤)
光や音の種類はどれくらいビセラルに関係していますか?

(日比野 様)
これは一概には言えることではないです。クライアントの環境により異なるためその場その場で違いがあります。そもそも、人口的な光は太陽の光と比べ人間に対するストレスが多いです。

その中で長時間働くことはかなり負担があります。そのため、ストレス緩和を目指しさりげなく光の度合いを変えることで無意識に蓄積されてしまうストレスを緩和しようと考えています。

音の場合ですと、音の種類、また状況によって人にとてもストレスを与えることがあります。例えばオルゴールの音は安らぎをもたらすような音色ですが、大空間で聞くと人間がストレスに感じる音になってしまいます。

そのため、オルゴールがよく流れる銀行で不快に感じる原因はほとんどが音だが、人はそれに気づかず行員やサービスが原因と考えてしまい、居心地の悪い銀行のイメージができてしまいます。

(植田)
直感的に良いサービス「内臓感覚」的なサービスは顧客に理解されにくいこともあるかと考えますが、BBSTONEさんが顧客に伝わるようにしている努力のようなものはありますか。

(日比野 様)
とても難しいですよね。最初はとても苦労しましたが、実績を積み重ねて理解してもらっていくしかなかったです。それでも、たまに感度が高い人がいて、「これだ!」って言ってくれる人がいるのは確かです。その例が、イプサさんの”命中リップ”という口紅のリコメンデーションツールを作ったことでした。

お客様の肌の色、その日の気分、そして、デートや職場など4種類のシチュエーションに合う口紅を科学的におすすめできるシステムを作り、売上UPにつながりました。

「こんなの作れる訳がない」と多くの人が言いますが、この斬新なアイデアに「いいね」と言ってくれる人もいてくれて、新しいことに挑戦してくれる企業さんもいらっしゃるんです。

(植田)
確かに、口紅はたくさん種類があって何がほしいのか顧客が分からなくなっている節があると思います。こういうものがほしかったという気づきを与えてくれる。それを科学的根拠を持って教えてくれるのは魅力的ですよね。

(日比野 様)
今までは販売員さんが「あなたの肌にはこれが合っています」とアドバイスを行っていたが、全てのお客さんが納得できる訳ではないし、どんな化粧品会社でもしていることです。ただ、測定機械を活用して、お客さんにあった口紅を探すというのは新しいマーケティングだと思います。

お客さんがランダムに表示される写真を選んでいくと、点数が計算され、今日の自分の気持ちがわかるという科学的な占いですよね。

実際にお客さんも測定から出てきた4色のリップを見た時に「こんな色買ったことない」と言っていたのですが、つけた時にすごく似合う。口紅を買うという満足感だけでなく、測定の楽しさを体験価値として買っているのだと思います。

(植田)
現状の課題やBBSTONEさんが抱えているニーズはありますでしょうか?また、その課題も教えていただきたいです。

(日比野 様)
課題だらけです。3,4年の長期間のプロジェクトに関わる機会が多く、自分が疲れてしまうことがあります。身体的な疲れよりも、精神的な疲れが多いです。4,5人の会社で研究以外の仕事を全て自分が行っているし、大きな企業さんからの依頼だと責任重大だと思いプレッシャーを感じることもあります。

(伊藤)
コロナ後のリモートワークや消費者の求める路線が変わった中での中長期の目標はございますか?

(日比野 様)
実際、コロナ感染拡大がBBstoneの一つのターニングポイントになりました。従来の被験者を実験室に招き実験することが躊躇われたため、リモートでの実験を可能にするプログラムを開発しました。

ショートタイムプレゼンテーションと呼ばれる消費者の第一印象を探る手法を用いたプログラムです。会社から被験者にURLを送り質問に答えてもらうようにしました。

(伊藤)
実験室に来ていただき実験するのとURLでの回答での結果に違いはありますか?

(日比野 様)
実験室の場合ですとより深く調査することができますが、多くの時間を必要とします。それに比べ、URLを利用した実験ですと同時に何人もの人が回答できます。この手法は簡易的ですが、時間や費用の削減をすることができるようになりました。

(伊藤)
ホームページで2021年の6月に発行されたweb電通報のインタビュー拝見しました。今後のCXやDXに注釈した事業で顔の悩みテストやIATを活用した心理テストなど“装わない自分を知る”ことによる心理学コンサルティングの大きな可能性を発見できました。それを踏まえ、学生の立場からの質問なのですが、この“装わない自分を知る”技術を活用し進路に悩む高校生や、大学生の職探しに応用できるのでは?と思いました。このような教育の方面への活用はどのようにお考えになりますか?

(日比野 様)
企業の採用試験に応用できると考えます。SPIなどの準備できる試験と異なり、本当の自分を出すことが可能になります。言語を用いた試験とは違い、あらかじめ数値化した画像を使い画像判定をし、被験者の気づかない特性を見つけられます。この試験を用いることで自分の隠れた欲求、適性を知ることができます。

そうすることで、学生の将来設計にも役立つと思います。また企業にとっても企業の成功者をこの手段により分析し、学生のものと比較することで求めている人材発掘を容易にすることができると思います。現在はまだ構想段階なので企業をコラボし世の中に出していきたいです。

(植田)
起業する時の不安や葛藤はありましたか?

(日比野 様)
全然なかったんですよね。起業するまで、結婚して子供がいて、サラリーウーマンをしていたんです。ある時、日本橋を歩いていると、出口がわからず大荷物を持ちながら立ち往生している高齢者の方がいたので、その方を助けてあげたんです。

後で「東京の人は冷たいばい」と夫に話したところ、夫は、人が冷たいのも原因かもしれないけど、駅の表示が見えづらかったのも原因なんだと言って、自分はそのような表示の見やすさの研究をしていると話してくれたんです。

結婚から何十年後に初めて夫の研究内容を聞きました(笑)。その時、夫の研究に感動して、学問としてだけではなく世間に出て多くの人に活用されるべきだと思ったんです。

私が起業するまで、千葉大学のベンチャー企業はこれまでになく、夫の説得に一年、大学の説得に一年で計二年間かかったのが大変でした。自分には経営の知識がなかったし、友達にも「すぐ潰れる」と言われていた。

しかし、その後には友人の立ち上げたベンチャーが潰れていく中、自分の会社が一番長く続いたんです。起業仲間の間でも、最初に潰れると言われていた自分が事業を存続できたのは、これをやりきると想いの強さが重要だったと感じています。

不思議なことに真面目に想いを実現させたいと思うと、どこかで助けてくれる人が出てくる。勉強で学ぶ知識だけではなくて、ビジネスは人と人との繋がりが大切なんだと感じました。

(植田)
事業を立ち上げてから最も大変だったことと、その乗り越えた方法を教えてください。

(日比野 様)
一番大変だったのが、大学のベンチャーの許可が降りなかったことです。今考えたら、当然ですよね、外部の訳のわからない人が大学のベンチャーを立ち上げたいと言ったんですから。

最後はもうある講演会で学長に会う機会があったので直訴しました。「私はこういうことをしているので、認可してください」と言ったんです。そしたら、2週間で学長が認可してくれました。今までの二年間は何だったんだと思いました(笑)。

他にも「研究をお金に換えるのか。」と言われたことがあります。研究は神々しいのものだから、金銭と結びつけてはいけないと言われたんです。

でも私はそうではないと考えていて、研究に見合う対価は支払われるべきだと思うんです。私は、夫の研究をビジネス化したお飾り社長と笑われていた時期がありました。助成金を申請する時のプレゼンの時も、「なんだ教授の奥さんか」と馬鹿にされていました。確かに、研究がお金に振り回されてはいけないが、正当な研究が対価を得るのは良いことなのではと思います。

(宮本)
日比野社長のお仕事の原動力となるものについて教えてください。

(日比野 様)
2つあります。1つは長い年月をかけて積み上げてきた研究成果へのリスペクトです。

もう1つは人への尊厳のある社会づくりをしたいという想いです。

例えば何か家電ひとつをとっても、使う人の尊厳を重んじたものづくりのお手伝いをしたいという想いが基礎にあります。社名の「BBstone」というのはエジプトにある「尊厳の石(BENBENSTONE)」からとったものなんです。

(宮本)
日々お仕事をされるうえで困ったこと、困っていることはありますか?

(日比野 様)
弊社はクライアントのお悩みを解決する会社なので、同じものを売っていくビジネスではないんです。色んなボールが飛んでくるので、それに答えないといけないのがしんどいですね。

(宮本)
それぞれの顧客に合わせて変えていかなければならないという点ですね。

(日比野 様)
その通りです。

(宮本)
御社の今後の夢と展望がありましたら教えて頂きたいです。

(日比野 様)
2つあります。1つは特許手法の汎用化を目指しています。今までは手法を開示せず、ノウハウを蓄積していましたが、大手調査会社とライセンス契約して手法を使ってもらうことによって、弊社だけでは使い切れていなかった手法も使用する機会を増やし、デザイン心理学をさらに世の中に広めていく道を選択しました。ライセンスフィーで収益が上がる仕組みを作っています。

一方で、矛盾するようですが解決の難しい企業様のお悩みを解決できる職人のような会社でありたいと思っています。

(伊藤)
事業の拡大について、海外への進出はお考えですか?

(日比野 様)
弊社単体で海外のコンサルティングを手掛けるのは考えていません。

ただ、画像判定テストを応用したIPSAさんの口紅のレコメンデーションシステムは実は中国でかなり話題になったんです。

なぜかというと、画像判断テストは画像を選ぶだけで自動的に得点化されるので、言語を使わずに今日の自分の気持ちや似合う口紅を診断してくれるからです。これによって売上も伸びてTikTokの再生回数もぐっと上がったそうです。

ですから、画像を応用した手法を他企業と組んで海外へ展開していく可能性は考えられますね。

(植田)
学生が今のうちにしておいた方が良いことはありますか?

(日比野 様)
私はなまけものの学生で、良い生徒ではなかったんです。就職なんて絶対したくなかったし、卒業後もアルバイトで良いと思っていた。大学も行ったり行かなかったりという日が続いていました。

ただ、周りの生徒はすごく真面目で、一字一句先生の言ったことをメモしていたんです。ある時心理学の先生がメモを取っている生徒を見てこう言ったんです、「お前達そんなメモを取るな、そんなことしてる暇があったら家に帰って天井でも見てろ。」と。

今になって考えるとあれはすごい為になるアドバイスでした。起業してから、眠れないことや夫や社員にも相談できないことが増えてきてました。

そんな時に天井を見ながら考えると解決策が浮かんできたり、リラックスできたりしたので天井を見ながら考えることはおすすめです。

(植田)
おすすめの本はありますか?

(日比野 様)
おすすめは夫の日比野治雄が書いた「よくわかるデザイン心理学」という本です。それと、見城徹さんと藤田晋さんが書かれた「憂鬱でなければ、仕事じゃない」という本にとても救われました。

仕事ってやりがいがなきゃいけないとか楽しさがないといけないという幻想があったんです。だけど、この本を読んで仕事が憂鬱なものであるとわかってスッキリしました。

この本にはヘミングウェイの短編が書かれており、「キリマンジャロの雪」の一部分が引用されていたんです。山頂で凍りついた一頭の豹の屍があった。なぜキリマンジャロに豹が登るのか誰も説明ができないんです。

孤独な豹が何かを目指して山頂を目指したことを自分と重ねあわせました。専業主婦になって友達とランチに行ったりする選択肢もあったが起業して孤独な経営者の道を選んだ自分にとても似ている気がしたんです。

他には、論語の「知好楽」という言葉ですかね。意味としては、何事をやるにしても、知ってるだけの人より好きである人が勝っており、更に好きだけの人より楽しむ人が勝っているという意味ですが、この言葉に仕事でカリカリしている時に出会い、肩の力を抜いて仕事に向かおうと思ったんです。

学生の皆さんにも、人生の局面で思い出してもらったら、役に立つかもしれないですね。

(伊藤)
最後に将来を考える学生へのメッセージをお願いします。

(日比野 様)
先程の質問でも挙げましたが、「憂鬱でなければ仕事じゃない」と「知好楽」この二つの言葉を送りたいと思います。

仕事はやりがいがあり楽しいなどの幻想があったのですが、仕事は憂鬱で嫌なものです。

この「憂鬱でなれば仕事じゃない」はそのことを私に気づかせてくれ、幻想の中から救い出してくれました。「知好楽」には知識をただ持っているだけでなく、知識を好きでいること、さらに楽しむことで人生を豊かに生きることができる、というメッセージがあります。

ただカリカリと仕事をし余裕がなかった時にこの言葉に出会い、もっと心に余裕を持とうと思えるようになりました。皆さんも長い人生の様々な局面で心に余裕を持ち楽しみながら生きてほしいと思います!

インタビューを終えて学生キャスターの感想

(宮本)
以前からHPは拝見していましたが、人々の深層心理を深掘りすることで様々な企業のお悩みを解決するという事業の独自性に改めて深い魅力を感じました。多様性が増している現代では人々の嗜好をカテゴライズすることが難しく、よりきめ細やかなインサイト把握が求められているといいます。人間の感性という曖昧なものを測ることができる心理学を使って人間の複雑な思考を理解し、それをビジネスに落とし込んで世の中に貢献している様々な事例を教えて頂き、とてもワクワクしました。

そんなお仕事をする中での苦悩や日比野社長の斬新な仕事観についてもお伺いすることができ、今後のキャリアを考えるのに良い刺激を頂けた機会になりました。

専攻している心理学の勉強もより一層頑張りたいと思います!

(植田)
直感に結びつくようなデザインだったり、人の行動を統計的に分析してそれをもとに提供するサービスってとても斬新だと思いました。特に口紅をおすすめしてくれる測定サービスは、男性だけれどしてみたいと思いました。人がワクワクするような体験を提供できるのはとても素敵です。BBSTONEさんのような心理学や統計を活かしたサービスがもっと世の中に出てきてほしいなと思いました。

(伊藤)
インタビュー前は心理学に基づいたマーケティングをいまいち理解できていなかったですが、日比野様からの回答を通して、日常の様々な場所に関連した重要な要素を担っていることがわかりました。音が銀行内でもたらす効果にあったように、異なる環境により違った効果が生まれることも興味深かったです。

また、直接経営者に対して質問する機会は多くないので今回の貴重な体験を通して、経営に大切なスキルを学ぶことができました。インタビューの機会を設けて頂きありがとうございました。

この記事は私達が担当しました

  

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