今回は、中古品リユース販売事業を直営店またはフランチャイズ方式で全国に展開する企業の株式会社ハードオフコーポレーション 代表取締役社長 山本太郎 様にインタビューさせていただきました。(※新型コロナウイルス感染症対策を講じ、オンラインでのインタビューとなっています。)
会社概要(2022年4月現在 ホームページ)
社名:株式会社ハードオフコーポレーション
設立:1972年7月
代表取締役社長:山本太郎
事業内容:リユースショップの運営及びフランチャイズ展開
URL:https://www.hardoff.co.jp/
インタビューはここからです!
(甲斐)
はじめに、貴社の事業内容について教えて下さい。
(山本社長)
リユースショップを展開しています。昔はよく「リサイクルショップ」と言っていましたけど、「リユース」(再使用)と「リサイクル」(再生利用)は違いますよね。
ハードオフでは使われなくなった商品を別の人の手に渡らせているので「リユースショップ」と呼んでいます。本を買い取り・販売する「ブックオフ」や、楽器やオーディオ・ゲームなどを買い取り・販売する「ハードオフ」など、リユース品を商品の種類毎にブランド分けをして展開しています。
また、直営店(約400店舗)とフランチャイズ店(約500店舗)があり、フランチャイズビジネスで成長してきたところも特徴かなと思います。全国36社の会社さんがフランチャイズ加盟をしています。
他のチェーン店だと、大体どこのお店に行っても同じようなものが置いてあると思いますが、ハードオフでは店舗それぞれ扱っている商品が違うんですよ。オーナーさんによってもお店の雰囲気が変わるので、より地域に根ざしたお店の展開になっています。
(甲斐)
最近は古着屋さんやフリマアプリが増えてきていますが、山本社長が思うハードオフにしかない強みはどんなものだとお考えでしょうか?
(山本社長)
「個性を出してください」という呼びかけを店員によくしています。チェーン店ならではの基本的なルール(清掃が行き届いている、商品の陳列をきちんとしている etc…)はもちろんあるのですが、その中でも働いている人の個性を出すことを大切にしています。
例えば、着物が得意なスタッフさんがいるお店では着物コーナーが充実していますし、音楽やバンドの経験者さんがアルバイトで入ってきたらそれだけで楽器コーナーの雰囲気がガラッと変わるんですよね。そう言った個性が出るのがうちの面白さなのかなと思ってます。1日に10店舗のハードオフを巡るお客様もいるんですよ!
(甲斐)
2021年3月の売上高は212億7000万円とHPで拝見しました。それ以前と比べてどれくらい上がっていますか?
(山本社長)
これは直営店の売上で、フランチャイズ加盟店も含めると500億円ほどです。お店の数が増えているので、売上高は年々上がってきています。最初は1店舗からスタートしたのですが現在は910店舗以上あり、年間30店舗以上出店しています。1人あたり年間平均500円くらい商品を買ってくれているという計算になります。
(甲斐)
コロナ禍であらゆるネットサービスの需要が大きく伸びています。ハードオフのネット事業はいかがでしょうか。
(山本社長)
この1年半を振り返ると、コロナ禍で巣ごもりするようになった影響で、ネット事業の需要が非常に伸びましたね。去年(2021年)の1年間で約190%(約2倍)になりました。今年も去年のものをベースに事業を行ってるんですけど、そこからまた130%ほど伸びています。
小売業で、リアル店舗だけで商売する時代は終わったなと思っているので、ネット事業に投資をして、ネット販売やアプリでの買い取りなどに力を入れていこうというのが今の方針です。
とはいえ、リアル店舗ありきなところもあると思っています。ネット販売だけだとライバルが増えていって空中戦になってしまうので、地上戦(リアル店舗)でもしっかり戦っていきながら、ネット販売も強化していきたいです。
(甲斐)
海外展開もされていると伺いました。リユース文化がない国がほとんどだと思います。受け入れてもらうためにどのような伝え方をしていますか?
(山本社長)
国や地域によって違いはありますが、例えばアメリカにはdonation(寄付)の文化があり、寄付によって集められた中古品のリサイクルショップのようなものや、庭で物を売るガレッジセールなどがあります。リユースの文化自体はあるけど誰もが安全且つクリーンに使えるお店は1店舗もなかったので、アメリカにハードオフを出店したら「なんだこの店は!」「日本人はみんなこんなことをしているのか!」と現地の人にすごく驚いてもらえました。このように「日本式のリユース文化」を輸出しています。
一方台湾にはリユース文化自体がないので、仕組みから説明しました。台湾の人たちは親日で協力的なので、「日本でこういうことをしているから台湾でも真似してみよう」と思ってもらえるような文化の輸出をしています。
(甲斐)
今後海外展開するとしたらどのような国がいいですか?
(山本社長)
極論で言うと「リユースの必要がない国」は無いと思うんですよね。SDGsの時代・環境循環型の時代だと言われているので、どこにでもチャンスがあると思っています。とは言ってもあちこち行くことは現実的に難しいので、まずは今展開している国の中でエリアを広げて地域に根ざした形を試していきたいです。
(甲斐)
リユース事業を立ち上げたときに反対の声が多かったとHPの「創業の思い」に書かれていましたが、それでも物の再利用が必要になる時代がくると思ったきっかけや、山本社長ご自身の実体験などはありますでしょうか?
(山本社長)
ハードオフを創業する時も、新業態を立ち上げる時もそうでしたが、みんなが「いいね」と思うことって参入障壁が低くて誰でもできそうだからあまりうまくいかないんですよね。一見難しそうだなと思うことだと、できた時の参入障壁が高くなります。そうすれば自分達の世界観でやっていけるので、周りの意見に左右されず、自分たちがいける!と思ったことにはチャレンジするようにしています。
(大谷)
特に「社会の人に対して大切にされている」とホームページで拝見したのですが、その考えが生まれた学生生活の体験がありましたら教えていただきたいです。
(山本社長)
学生時代はずっとテニスをしていて一般的な大学生で、どちらかと言うと自分自身のためにしていることが多かったんですよね。いざ、社会人になるとなった時にいろんなことを考えました。何のために働くのかとか、社会人とはなんぞやとか、そもそも生まれてきて俺はなんでここにいるんだっけとか結構考えた時期がありました。そのとき、やっぱり「人の為とか世の為とか社会の為になることをしないとだめだなぁ」ってすごく思いました。
例えば、人を騙してでもお金を得て幸せになれればそれでいいかって考えると、多分そうじゃないと思うんですよね。「人のためになる」っていうことがすごく大事なんだろうなって考えてました。学生時代の自分の反省も含めて、「社会や人のため」という事を考えるようになったかなと思います。
(大谷)
では次の質問に行きます。なぜ、大学卒業後に株式会社ファーストリテイリングに入社されたのですか?
(山本社長)
就職活動をしていた時期は、いろいろ悩んだ時期でももちろんあって、でもそこまで多く就活してなかったんですね。証券会社とユニクロくらいしか受けていませんでした。
将来的には父親がハードオフを創業していたので、ハードオフに入社して社長になるようなイメージをなんとなく持っていました。そうなったときにハードオフに入社する前の数年間、どこで修行させてもらおうかと考えて、現場的なところが大切だなと考えました。チェーン店で会社を経営するに際して、やはり現場がすごく大事だと考えました。
証券会社に入ると、現場感はあると思いますが、実際のチェーン店や小売業の現場は経験できないので、それなら大学を出たタイミングでそういった小売業の現場で仕事をしようって思いました。当時、ユニクロがすごく成長しているチェーン店だったのでユニクロさんにお世話になろうと思って、選考を受けました。
(大谷)
HPに書かれた「ワクワクを形にする」なのですが、私もワクワクすることがすごく好きです。「行動に移したい」、「それを達成するにはどういうことをすればいいんだろう」というようなことを考えることがすごく多いのですが、事業の“ワクワク”は具体的にどのような時に感じるのでしょうか?
(山本社長)
社員とかフランチャイズオーナーさんと夜飲みに行くことがあるんですよね。そういう時に面白いアイディアが結構出てきます。
あと、お店に行って店長さん、スタッフさん、お客さんと話している中で「こういう店が面白い」という話や「新規事業でこういうのあったらどうだろう」という話をします。人と会っている時にそういうアイディアが出てくると思います。
(大谷)
「今後について」質問させていただきます。HPの文章を拝見して、今話題のSDGsと関わりが大きいと考えました。SDGsで事業を立ち上げるとしたら、今後どのような事業をしていきたいとお考えですか?
(山本社長)
リユース自体が循環型社会に貢献していると思うし、地球環境に役立っていると思うので、僕らとしてはリユースというところにこだわって商売をやっていきたいと思っています。
(大谷)
新たなことをやっていく上での課題がありましたら教えて下さい。
(山本社長)
新規事業を作るときってすごくチャレンジ精神が必要で、そのチャレンジ精神を社員みんなが持てているか、というところですね。チャレンジ精神は、薄れていくと考えています。そこにどうやって立ち向かおうかなと。
これから僕の頭の中では新しいこと、どんどんチャレンジしたいと思っているけど、やろうぜと言った時に、消極的になるところは課題ですね。新卒社員には、若い力で消極的になる点を盛り上げてもらいたいです。
(大谷)
海外の話があった一方で、国内展開について今後の目標を教えて下さい。
(山本社長)
国内は2つ柱があって、1つは、リアル店舗の出店を増やしていくっていうこと。もう1つは、ネットの取り組みをしっかり加速していくということです。
リアル店舗の方で言うと、国内で2000店舗は出店することができると思っています。根拠は新潟県です。本社がある新潟県には56の店舗があるんですよね。新潟県の人口が220万人なので、220万人に対して56店舗って結構あるわけです。日本で1番エコな県って新潟県だと思う、どこに行ってもハードオフがあるからね。この状況をどこの県でも実現したいと思っています。
新潟の人口は全国からすると2%弱なんですよね。そうすると、100人に2人が新潟県民。新潟県みたいにするためには、×50すれば良い。東京の都内だと賃金が高いから、利益がとりにくくなるけど。その点を差し引いても2000店舗の可能性はあるなと思っています。そうなるとリユースがもっと生活に近くなる、店舗を増やすことでそれを実現したいです。
ネットに関しても、今ネットでの販売やアプリを色々作っているけど、こう言ったものは10年前に全くなかったし、考えもしなかったことなんですよね。もう、ここ1,2年で取り組んでいるところがようやく結果として出始めました。今から10年後って全くどうなってるかわかりません。その中で、ネットだとかリアル店舗以外のチャネルでプランを活かせるところはしっかり活かしていきたいと思っています。
リアル店舗の価値ってネットに押されているところが現在あると思いますが、そこで僕らハードオフの取り組みが小売業を救うものになっていけたらと思っています。そして、ネットの取り組みでハードオフが成功したものを、他の小売業に対しても提供できるものになればなあと考えています。
(甲斐)
創業の地、新潟県新発田(しばた)市への想いを教えて下さい。
(山本さん)
生まれ育った町で、高校時代まで住んでいたので思い入れはもちろんありますが、ハードオフが日本全国・世界に店舗を展開した要因として「新発田市で成功した」というのがポイントだと思うんですよね。
新発田市は人口9〜10万人くらいの都市で、どこにでもあるような都市だと思うんです。初めてのフランチャイズ加盟店を立ち上げた静岡県浜松市の名倉さんという方も、「新発田でできるなら浜松でもできるよね」ということで来て頂いたし、福井や岐阜、北海道など他の地域からも同じような形でお店が増えていって日本中に広がったんですよ。
もし、これが「(渋谷や新宿などの)大都市で成功しました!」だったら、大都市を中心に店舗が広がっていったと思うんですけど、新発田市が発祥になることでより地域に根ざした経営ができています。
最後に将来を見据える学生のために、何かメッセージがありましたらお願いします。
(山本社長)
今、みんな簡単に情報を得ることができるじゃないですか。僕らの時って本当にウェブとかなかったので、自分で足を運んでやってみるって言うことがすごく大事だったんですよ。
たしかに、簡単にウェブとか動画とかで見れて疑似体験ができたり、知識を簡単に増やせるっていうのはすごく良いことだと思います。一方で、リアルに触れる機会がなくなってきていると思います。コロナもあって動き回れないし、海外に行って見聞を広げることもしづらいと思います。
そうは言っても、リアルを大事にしてる人や自分の足で行って自分で触れて体験する人って強いと思います。今の学生さんこそ、足を運ぶことを大事にしてほしいです。情報を得て知って気になるんじゃなくて、自分で見て体験する価値を大事にしてほしいです。
インタビューを終えて、学生キャスターの感想
(甲斐)
ハードオフやブックオフなどを身近に利用していたのですが、まさか初めてのフランチャイズ加盟店が地元の浜松にあるとは思っていませんでした。山本社長の地元新発田市を発祥の地として大切にする姿勢が、地域に根ざした店舗展開やお店づくりに繋がっているのだということが分かりました。
また、店舗毎で個性を大切にしているところも素敵です!通常の小売店はマニュアルをしっかり決めて、商品の種類から店員のセリフまで統一するお店が多くあるので、とても珍しいと思います。経営者だけでなく、アルバイトの店員さんや社員さんもイキイキと働けそうですね!次にお店に伺う時は、各店舗のカラーに注目して「ハードオフ巡り」をしてみたいです。
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