第24回「ベンチャー企業に聞いてみよう!」は、「世界中の人たちを友だちに」をコンセプトに、国際交流をしたい日本人と、ガイドされたい外国人のマッチングサービス「Huber.」を運営する株式会社Huber.の代表取締役CEO紀陸武史 様にインタビューさせて頂きました。
会社概要(※2017年12月現在)
社名:株式会社Huber.
設立:2015年4月27日
代表:
事業内容:
※国際交流をしたい日本人と、ガイドされたい外国人のマッチングサービス「Huber.」(2020年10月31日にサービス終了)
・遊ぶ広報
・TRAVELERS Hub事業(観光案内所運営)
・地域プロデュース事業
・URL:https://huber.co.jp/top
インタビューはここからです!
(青木)
早速ですが、どのような事業をされているかを教えていただいてもよろしいでしょうか?
(紀陸社長)
国際交流をしたい日本人と、ガイドされたい訪日外国人向けのマッチングサービスを提供しています(2020年10月31日にサービス終了)。
現在約1,500人の方がTOMODACHI GUIDEとして登録してくれていて、大学生を中心に広がっています。展開しているエリアでいうと鎌倉から始めて、東京、京都、別府、札幌といった5地域が拠点エリアとなっています。
旅先での出会いはかけがえのないものになるという考えから、世界中に友だちを作りたい人たちのためのC to C ビジネスです。旅行者のニーズを組んだ旅行プランを考えて、ガイドを行っています。
実際の訪日外国人が何を望んでいるのかという情報を取得・提供することで、日本の観光産業の活性化にも貢献したいと考えています。
(河尻)
ガイドされたい外国人と国際交流をしたい日本人をマッチングするという発想がとても衝撃的でした。このアイデアを思いついたキッカケはなんですか?
(紀陸社長)
きっかけはバックパッカーをしているとき、旅先のタイで出会った少年に言われたことです。「日本は教育が進んでいる国なのに、どうして6年も英語を勉強していてそれしか英語が話せないの?」と。
タイには観光で生きている人がたくさんいるので、英語は必要不可欠です。生きていく環境の中で英語が日常的に使われています。
一方で日本は、日常生活で英語を話す機会が少なすぎますよね。日本は島国で他の国と直接的に接していないので、普段の生活であれば英語を話す機会が特にないですよね。日本でも、もっと英語を使う環境があったらいいんじゃないかとぼやっとですが感じていました。
ビジネスでやるなら社会的に意義あることをしたいと考えていたので、英語をただ話せるようにするというだけでなく、環境を変えたいとも思いました。
そこで、日本で英語を普段話す環境がないのであれば、海外から英語を話す人にきてもらうようにして、英語を話す環境を作ったらいいと考え出したのが最初のきっかけです。
あと、私は旅が純粋に好きなんです。旅って非日常体験ですよね。そういった非日常の体験の中で出会った人とはとても仲良くなれます。世界中にそういった繋がりができたらいいなっと思っていたのも、根底にはあったと思います。
旅というコンテンツのみを提供したいのでなく、旅を通して出会った人と仲良くなりたい、そのような繋がりを大切にしたいと考え、事業を行っています。
(三谷)
会社には様々なバックグランドを持った仲間が集まっていらっしゃるかと思います。そういった多様な仲間と事業をしていくなかで大切にしていることがあれば教えていただけますか?
(紀陸社長)
掲げている「理念」です。企業として何のために事業をやっていくのかという理念という旗を大きく高く掲げ、それは決してぶらしません。
私たちは「世界中の人を友達にしたい」という理念を持っています。例えばデザインについて議論するときも、それって「世界中の人を友達にできるんだっけ?」と議論します。
あとは「箱」を作らないということも意識しています。企業を箱にはせず、来る者も、去る者も拒みません。旗を掲げてそこに集まってくる仲間たちと事業に取り組んでいます。
イメージだとキャンプファイヤーをしているような感じですかね。中心の火(旗)を囲んで、踊りたい人は踊り、語りたい人は語る、その火の周りには1種類ではなくいろんな動物もいたりします。ただ中心には火(旗)がある、そんなイメージですね。
掲げた旗(理念)は最初からずっとぶらしていません。どんなに大変な時でも、みんなで歯を食いしばって1寸もぶらさずに事業をやってきています。だからこそ、みんながついてきてくれているし、より多くの仲間が集まってきてくれているのだと思います。
(青木)
いろんなバックグランドを持つ仲間をまとめていくのってすごく大変だと思うのですが、そのような経験はありますか?
(紀陸社長)
たくさんありましたね、水と油みたいな仲間もいますから。けど、わかってきたのは強い旗をきちんと掲げて、それを中心に議論をしていくことの大切さです。
水と油もずっと混ぜ合わせていくと乳液みたいに混ざるんですよ。それぞれが持っているのは個性なので、その個性は強みとして伸ばしていって欲しいんです。
ただ、個性だけを強みとして磨いていくと当然できないことも出てきます。そういったときに「頼る」ことを覚えて欲しいと思っています。お互いに頼り頼られていくうちに相手の強み、良さがお互いにわかり、尊重できるようになります。
得意なことを磨いていくことで、自分のできないこともわかるようになります。それぞれが理解しあうことで、その人その人の居場所ができます。
「なんでもできる」と思っているうちは、居場所はできません。
(三谷)
AIのようなテクノロジーが発達していくと、ある程度でいいような仕事はロボットなどに変わっていくと思うのですが、企業としてはこの点をどのように考えていらっしゃいますか?
(紀陸社長)
人も企業も、仕事も街も、そこにある個性を際立たせて、それを伝えるべき相手にきちんと伝えていけるかがとても大切になると考えています。
グローバルで戦える個性を育てていくことが個人としても、企業としても必要です。だからこそ、私たちは最初から国内だけでなく、グローバルで勝負できるビジネスを考えてきました。
(青木)
世界でも活躍できる日本人というのは、どんな人だと思いますか?
(紀陸社長)
きちんと自分のことを知っている人ですかね。
個性を際立たせることができ、「自分は自分、他人は他人」と理解したうえで、多様性を受け入れながら取り組め、他人との違いを前提として共に協力できる人はグローバルな感覚がある人だと思います。
(青木)
それでは逆に海外と比べて日本人に足りないと感じる点はどういったところですか?
(紀陸社長)
足りない点は積極性です。島国だからということもあるとは思いますが、多民族との関わりが持ててないですよね。
これまでは日本から出なくてもなんとかなる環境だったので、外にわざわざ出ようとあまりしてこなかったと思います。
(三谷)
事業を行っていく中で、改めて気付いた日本の良さはどういったところですか?
(紀陸社長)
これは、たくさんあります。まず親切な良い人が多いですよね。これだけ性善説が通る国はほかにあまりないと思います。共感から善意の連鎖が生まれ、助け合うことの大切さをみんなが理解しています。
だからこそ、シェアリングエコノミーは日本でこそ成功するビジネスだとも考えています。Huber.というビジネスをアメリカで最初に行っていたら、出会い系ビジネスだと思われていたかもしれません。
日本にくる英語を話せる観光客の方と、英語を話したい学生を繋げるということからスタートしたことで成り立ったビジネスです。英語を話せるリテラシーの高い観光客の方と、学びたい、交流をしたいと純粋に思う学生たちだからこそ、素晴らしい感動共有ができるサービスになっています。
また、国民の半数以上が「大震災」というひとつの原体験を共有した点も大きいです。「助け合う」ことの意義をみんなが意識・無意識的に関わらず共有している国は、日本しかないと思います。
(河尻)
事業の話に戻りますが、TOMODACHI GUIDEを展開していらっしゃいますが、これから新しく企画している取り組みなどがあれば教えてください。
(紀陸社長)
東北地方でHuber.の活動を広げていきたいです。まだまだ東北に訪日外国人の方をあまり送れていません。実は当社の創業メンバーの多くは震災をきっかけに知り合ったんです。そういった点からも、いつか東北に人を送れるようになりたいと思ってきました。
今回、大手鉄道会社と連携することができ、これだけの素晴らしいパートナーがいれば、より多くの訪日外国人に東北の魅力を伝えていくことが実現できると確信しています。
(青木)
いつの間にかお時間もラストになってきましたが、紀陸社長の座右の銘を教えていただけますか?
(紀陸社長)
いくつかあるんですよね、これまで経験してきたことから大切にしたい言葉として13個ほどあるんですよ(笑)。その中でも特にというものを3つあげると、
1つ目は、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」(リクルート創業者 江副浩正氏の言葉)です。
環境のせいにするのではなく、環境ごと変えていき、自分で未来を切り開いていく。事業を行ってるなか突き詰めていくと、抜き差しならない状況に陥ることがあります。そういった究極の選択をしてきたときに、環境ごと変えてきたからこそ今の自分があるんだと思います。
2つ目は、「人の醜さを愛せ」です。
いい面ばかりでなく、清濁合わせて人だし、清濁合わせて社会だし、初めからいい面ばかりを期待していると傷つくことが多いですよね。人の良いところも悪いところもひっくるめて人間らしいと、寛容に受け入れられるようになって、初めて人を正しく受け止め、理解できるようになりました。
最後の3つ目は、「疾風に勁草(けいそう)を知る」です。強い逆風が吹き、困難や試練に向き合って初めてその人の真価が問われるという意味合いですかね。追い込まれたときに本当の自分が出るし、譲れないもの、そうでないものもはっきりします。
逆境を避けず、あえて自分を置き続ければ、自分にとって何が大切なのかが見えてきますし、人生がどんどんシンプルになっていきます。その人にとって何が幸せなのか、わかるようになってきますよね。
(三谷)
最後にもう一つ、世間体を気にしたり、環境などから将来について悩んでいる多くの学生に対して、これまでの経験から一言いただきたいです。
(紀陸社長)
いろいろやってみたらいいです。やらずに、誰かと同じところに来たとしても、あっちに行っていれば良かったと後悔はすると思います。これで良かったのかなって迷いますよね。大企業で働いてみたいと思うなら働いてみるべきですし、ベンチャーで働いてみるのもいいです。
ただ、やろうと悩んでいるだけなら、まず行動してやってみるべきです。その結果として、私みたいにどうしても起業したいと思うかもしれませんし、逆に大手企業で大活躍する人もいると思います。もう転職しようと思って転職できないような環境ではないので、やりたいと思うならチャレンジをしてみるべきです。
インタビューの感想
(青木)
本当に素敵なお話が聞けて感動しました。文字通り言葉が心に染みました。ぶれずに夢を追いかけるのってとってもとっても素敵!!!胸が熱くなって、インタビュー後速攻Tomodachi Guideに応募しました(笑)
今までいろいろな経験をして、めぐりめぐりの出会いを大切になさって来た紀陸さんだからこそ語れるお話なので、私が文字にするとどうしても内容が薄まっちゃう気がする…(泣)頑張りますが!でも、できることなら紀陸さんの生の声をみなさんに聞いてもらいたいです(笑)名言を浴び続けた濃い1時間でした。ありがとうございました!
(河尻)
初海外旅行でいった韓国で1番記憶に残っていることは、民族衣装のレンタル屋さんでの、スタッフさんとのぎこちない英語での会話だった。その国の料理や文化に触れること以上に、その国の人々との交流は旅の中で特別な記憶として残る。
Tomodachi Guideは”人と人のマッチング”に焦点をあてて事業を展開した紀陸さんの”人好き”がそのまま生かされていると思った。
そして、自分が本当にやりたいことは何かを突き詰めて、その実現にむけて行動を起こした紀陸さんは本当に格好いいと思った。
(三谷)
訪日外国人と、日本人ガイドをマッチングさせる。私自身、海外をバックパッカー旅行で回ることが大好で、そんなワクワクするサービスがあるのか・・・!と今回のインタビューをとても楽しみにしていました。鎌倉の鶴岡八幡のおひざ元にあるオフィスは、畳が敷かれていたりとユニークで、居心地の良さがバツグンでした。
「世界中の人を友達に」という理念を旗に掲げ、日本or海外という視点で考えるのではなく、世界の中の日本という立ち位置で物事を捉え事業を展開するHuber.さん。その考え方やビジョンの、スケールの大きさに圧倒されました。
海外を旅したこと、大手企業で働いたこと、そして大震災でのボランティアとさまざまな経験をしたからこそ、ご自身が本当にやりたいと思えることに出会えた紀陸さん。事業について話をされる姿は本当にキラキラとしていて、エネルギーに満ち溢れていました。
私自身も今後、最高の自信と熱量を持って全力を注げられるようなライフワークを探し続けていきたいです。
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