今回は株式会社ストロボライト代表取締役の石塚様にお話を伺いました。園芸業界にITを取り入れるといった事業を進める中での考えや、日々意識していることなどを語ってくださり、学ぶところの多い充実したインタビューとなりました。
※新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からオンラインでのインタビューとなっております。
会社概要(2022年4月現在ホームページより)
社名:株式会社ストロボライト/STROBOLIGHT Inc.
設立:2012年7月
代表:石塚 秀彦
事業内容:
庭・外構のプロデュース・施工
ガーデニングWEBメディア運営
オンラインストアでの販売
所在地:東京都港区白金台5-18-9 VORT白金台6階
URL:http://strobolight.co.jp/
インタビュー内容
(森)
事業内容を詳しく教えていただいてもよろしいでしょうか。
(石塚様)
ストロボライトでは「植物と暮らしを豊かに。」というミッションを掲げています。ミッションに基づき、情報・モノ・サービスの3つにわけて事業を展開しています。
情報の事業では「LOVEGREEN」という園芸に関する国内最大級のウェブメディアを運営しています。
この姉妹サイトとして「LOVEGREEN STORE」も運営しています。こちらがストロボライトのモノ事業であり、編集部がセレクトしたガーデニンググッズや植物を販売するオンラインストアとなっています。
もう一つのサービス事業は、「MIDOLAS」といい、庭・外構のプロデュースから施工までを一貫して行うサービスとなっています。
この3つが、ストロボライトで展開している事業です。
(森)
園芸そのものの魅力については理解しているのですが、ビジネスとしての園芸の魅力や園芸業界の魅力は何でしょうか。
(石塚様)
ストロボライトを起業する前に、さまざまなジャンルや企業のプロモーション活動をしてきて、植物に関わる会社さんは少なかったなという印象を受けました。僕が園芸業界に興味を持ち始めた2013年頃は、植物に関するメディアといっても、個人ブログや高齢者向けのメディアが多く、園芸業界があまり手を付けられていないというところに面白みを感じ、植物に携わる事業を始めようと思いました。
また、園芸業界の働き手は小売店や職人さんが主なのですが、多くが小さい組織であり、大きな企業やスタートアップが少なく、ビジネスとしては園芸業界は少し遅れている状況にあると肌で感じ、園芸業界を一から盛り上げるというところに、魅力ややりがいを感じています。
あとは、植物関係の仕事に携わる人たちの人柄や温かみにも魅力を感じています。
(丸山)
HPを拝見して、サボテンがお好きだと伺いました。石塚様のサボテン愛を象徴するエピソードがあれば教えてください。実際、ご自宅にはどれくらいの植物があるのですか?
(石塚様)
数えたことが正直ないんですけど、僕にかぎらず一部のメンバーは100鉢くらいは全然あります。サボテンの中でも、小さいサボテンだといっぱいあったり、種を撒いて自分で交配させるというのもあるので、そういうのを合わせるとすごい数があります。ある程度大きいものになってくるとそれなりの数というところですが、100くらいは全然あるんじゃないですかね。
(石田)
ストロボライト様は、園芸業界にITを組み合わせた様々なサービスを展開していますが、ライバルとしている業界や企業はありますか?
(石塚様)
ライバルとはまた違うのですが、社内では、アパレルのユニクロさん・ベイクルーズさん・ワークマンさん、ホームセンターのカインズさん、百円ショップのセリアさんやダイソーさんをベンチマークとしています。アパレルブランドでも植物を扱われていたり、コロナ禍で百円ショップでの花の購入も増えてきましたし、すごく参考になるなと思っています。
過去に広告・マーケティングで培った可処分時間の概念から、趣味に充てられる限りあるお金を、様々なもので奪い合っているということを強く意識していて、その点で広い視点で捉えて展開していくべきだと考えています。
(才津)
貴社が運営する「LOVEGREEN」のユニークユーザー数(特定期間内にWebサイトを訪れた人数)が国内で第1位、世界では第3位と伺いました。利用者が増え始めたきっかけがあれば教えて頂きたいです。
(石塚様)
まず立ち上げのきっかけは、引っ越した際に日の当たるスペースに何か置きたいというふとした経験でした。そこから植物を購入し育てる、写真を取る、情報を調べるということ行い、ライター兼編集長として情報発信していました。また情報は自分がユーザーとして欲しい情報を欧米などの世界や全国各地の方々の協力を得て集めました。その結果立ち上げから1年間で数十万人のユニークユーザー数になりました。
その後ファイナンスという形で資金調達を行い、ライターの方などを囲った編集部として成り立たせました。また当時影響力が大きく、園芸を好む世代と合致していたFacebookでの拡散に注力したことで、数百万人にまで成長することができました。
また園芸の記事は一過性ではなく、月毎に繰り返す、つまりストック性があります。そのことに気付いた私たちは、SEO対策に注力しました。この取り組みが大きなきっかけとなり、現在では約900万人のユーザーの方に利用して頂いています。
今後は数だけでなく、質もより高めることでファン化を目指していきたいと考えています。
(才津)
F2・3層をターゲットにしているとのことですが、そのようなターゲットに絞った理由や経緯を教えて頂きたいです。
(石塚様)
自分と世代が同じ人たちの流行やトレンドを理解しやすかったということがあります。
また園芸を好む30代・40代の女性というものを見える化した際、園芸をオシャレなインテリアとして楽しむ人が多いと感じました。しかしそのような人達がネットで園芸の情報を得る機会は少ないと思い、F2・F3層をターゲットにした事業を展開しようと考えました。
(石田)
新規顧客獲得について伺いたいのですが、メディアがあまり普及していない70代や80代の層に対して、どのようにアプローチしていますか?
(石塚様)
社員の平均年齢も30代後半くらいなので、社内の空気感的にも、自分たちの等身大の同世代がみて楽しいと思えるものを作っていきたいし、そこがやっぱり掴みやすいと考えています。
一方で70代・80代でも、震災の影響でLINEが普及したことで、スマートフォンを使う方が増えてきたと感じています。仕事をリタイアされて時間があるからこそ、たくさん記事を見てくれたりFacebookのコミュニティで口コミとして広げてくださったりしています。そこは見ていて面白いですし、チャンスが増えていると感じます。
(石田)
園芸×ITの可能性を発信するために上場を目指しているとのことですが、上場に向けての取り組みを具体的に教えていただきたいです。
(石塚様)
業務面では、監査法人さんと契約することができたので、監査難民のスタートアップ企業が増えてきている中で、こういったチャンスを掴めている状態が、上場にリアリティが増してきているのかなと感じます。
事業面では、上場までにやりたいけどできない事や、上場企業だから実現することがたくさんあると思っています。それを踏まえて、自分達なりに「MIDOLAS」や「LOVEGREEN」で将来的にやりたいことを、上場スケジュールから逆算した優先順位付けをしています。
(森)
今、さまざまな企業で、利益追求以外のSDGsや社会をよりよくするような活動に取り組んでいますが、石塚さんはこの園芸ビジネスを通して、どのように社会貢献したいですか?
(石塚様)
グリーンカンパニーをやっていること自体、社会貢献にはなっているとは思っていますが、IT×園芸という点で社会貢献できていると感じる点をお話したいと思います。
園芸業界に携わる方たちはとてもいい人なのですが、いい人すぎるがゆえにビジネスとしてはまだまだというか、「もっと事業を大きくしたい」「上場したい」という野心的な方が少ないと感じました。
また、農学部や園芸学部の学生でも園芸業界に就職する人は1割程度と聞き、受け皿となる魅力的な園芸企業が少ないのかなと思いました。
だから、IT×園芸によって、園芸業界でもきちんと儲けられる、上場会社にもなれる、という理解をもっと広めたいと思いました。園芸業界でポジティブに働く人が増えて、園芸業界の社会的地位が上げられたらいいなとはいつも思っていますね。
(森)
これまでお話を聞いてきて、石塚さんの中で価値観や展望がしっかりしているからこそ、たくさんの成功を収めてこられたり新しいことに挑戦されてきたりしたと思うのですが、ご自身で大切にされているモットーや理念はありますか。
(石塚様)
「為せば成る」ですね。これは小さい頃から母親から言われていた言葉で、今も染みついています。諦めることはいつでもできるのですけど、途中で諦めると「ゼロ」なんですよね。やりたいと思ったときにチャレンジして、最後までやりきった人が成功するのだと思います。なので、「為せば成る」とか「最後までやりきる」というのがモットーになっています。
(森)
私は途中で諦めてしまうことが多いので、「為せば成る」という言葉はとても響きました!ありがとうございます。
(才津)
先程は貴社の成長について伺いましたが、2012の設立以降、経営や事業を行う上で苦戦を強いられた経験を教えて頂きたいです。
(石塚様)
毎日あります(笑) 今日も実際にありました(笑)
具体的には事業を自分ゴトや仲間ゴトで行なってしまい、失敗してしまったという経験があります。このようなことはITやWEB系の仕事では多いと思います。しかしそのような経験も、何が失敗するかを知ることができてラッキーと考えています。
また資金調達でも苦戦を強いられることもありますが、そのような経験から成長に繋げることが重要であると考えています。
(森)
企業としての展望についてはお伺いしてきましたが、石塚さんご自身の、今後目指す「経営者像」を教えていただきたいです。
(石塚様)
「こんな人でも経営者になれるんだ」と思ってもらえる経営者になれたら嬉しいですね(笑)
経営者って、お金持ちとか偉い人とかっていうイメージが強いと思うのですけど、僕は生活者や一般消費者の視点を持ち続けたいと思っているので、現場の人たちとリアリティーのある話をしつつ、一方で高い視点で描いくこともできる経営者になりたいですね。
(丸山)
続いて学生に向けての質問なのですが、学生が今のうちにしておいた方が良いことはありますか?
(石塚様)
した方が良いことは多分それぞれ違うと思うので、僕自身実際に学生の頃どういうことをしたかというエピソードを一つ話させていただくと、僕大学2年の頃に奨学金を無金利で200万くらい借りたんですよ。学生って時間があってお金がないっていう状態だと思うので。学生の頃にしかできないことでいうと海外ですね。100万円を南米の旅行に使って、2,30万円をエジプトに使って、アジアにいくつか使って。あとはバイク買って、サブカルに入り浸って。社会人になったら時間もないと思うので、そういう感じでいろんなところに行って、いろんな人と会って、いろんなことを感じたり、見たりしていました。
これが今何の役に立っているかというと、例えば一つの趣味について、採用とか取引先の人とそれについて話せるじゃないですか。海外という軸でも実際にいろんなところに行って見てきたことの会話ができるというのが結構価値観としてあると思うんです。
最大公約数のことばかりやっていると、多分就活の時もそうだと思うのですけどなんか同じ人にしか見えないので、自分の好きなことをやってユニーク性を仕上げるということは、やった方がいいのかなと思います。
(丸山)
大学ではプログラミングを専攻されたとのことですが、当時からプログラミングを使ったビジネスのビジョンが何かあったのでしょうか。
(石塚様)
家業が洋服屋さんで、兄弟四人いるんですけど僕末っ子で兄が18歳離れているんですよ。自分が高1の時にこれからIT来そうだなというのは感じていて、あと兄は家業のECショップをもう作っていたんです。それを見ていたので、インターネット系のビジネスを将来的にやるということで物理を始めて理系に進みました。だから大学の時にプログラミングでどうのこうのではなくて、高校生の時からそういう方向性がありましたね。
自分は最初から事業をやりたいと思っていて、自分でプログラミングをやるというのは考えていなかったんです。ただ、将来的に絶対ITビジネスをやるときにプログラマーの人と仕事をするので、プログラミングをやったという既成事実が多少説得力になるのかなということを少し考えた部分があります。
(丸山)
最後に、将来を考える学生に向けてメッセージをお願いします。
(石塚様)
インタビュー記事を見ている学生の方は、何かしら探っていたり、自分の方向性を決めようとしていたりしている方が多いと思うんですよね。だからそういった記事をいっぱい見て、いろんな人の生き方とか、こういう選択をしたらどうなんだとか、かつ、その人はどういう性格や思考を持った人か、この2つを学ぶことが僕は重要だと思っています。
今の時代終身雇用って現実的でなくなってきているじゃないですか。自分のスキルアップだったり、その時の思いとかで転職する確率が上がっていると思うので、そのためにもいろんな人の成功パターンとか失敗パターンのインプットをしていくといいのかなと思います。
インタビューを終えての感想
(才津)
今回のインタビューを通じ、好きを突き詰めることの大切さを実感することができました。また「園芸×IT」によってより多くのニーズに応える、石塚様の事業にとても魅力を感じました。
石塚様の考えや価値観に触れることで、自らの大切にしたい考えは何であるのか改めて考えるきっかけとなりました。石塚様のお話にあったように、「様々な人の生き方や価値観に触れる」ということを大切にしながら、残りの学生時代を過ごしたいと思います。
(丸山)
お話をお聞きする中で、石塚様は本当に植物がお好きだということがとても伝わってきました。だからこそ消費者の想いを汲み取った事業ができるのだと感じました。
また、事業を人々に求められるものとして成長させるために、世の中の状況を的確に把握したり、広い視点を持ったりすることが大切ということもわかりました。
好きなことを諦めずやり遂げるという石塚様の姿勢を見習い、私も日々成長していきたいです。
(森)
植物で暮らしを豊かにしたい、植物に関わる人たちの受け皿になることで社会貢献したい、という石塚さんの思いがとても印象に残っています。貴重なお話を聞くことができ、とても有意義な時間になりました。
今回は貴重なお話をありがとうございました!
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