今回は株式会社LX DESIGN 代表取締役の金谷 智様にインタビューさせていただきました。
LX DESIGNは教育特化型 外部人材のマッチングサービス「複業先生®」を提供し、教員だけでは手が回りにくいキャリア教育、プログラミング、グローバル、起業教育を初めとする各領域において外部人材を派遣し、児童・生徒が社会とつながりながら学びを深める「社会に開かれた教育課程」を推進しています。
今回、金谷様には以下のようなことを伺いました!
・現在の事業内容
・教員時代の苦労や、疑問点
・事業に込められた想いや⽅針
・実際に利⽤された教育機関の反響
・新たに展開してみたい学習の領域
・コロナ後の教育業界の⽅向性
・学⽣へのメッセージ
(※新型コロナウイルス感染症対策を講じ、オンラインでのインタビューとなっています。)
会社概要(2022年10月現在ホームページより)
社名:株式会社LX DESIGN
設立:2018年7月
代表:金谷 智
事業内容:教育事業、メディア事業
本所所在地:東京都千代田区麹町1-4-4 2F
URL:https://lxdesign.me/
インタビューはここからです!
(中塩)
現在の事業内容について教えて下さい。
(金谷社長)
学校の先生が外部の講師に授業をお願いできる、「複業先生®」というサービスを運営しています。民間や地域の個人の人たち、あるいはその領域で事業をやっている会社に関わっていただいて、学校の先生と一緒に授業をつくっていくサービスです。
(中塩)
LX DESIGNのH Pも拝⾒しました。幼少期から⽇本⼀の教員を⽬指していた!というコメントがあったのですが、なぜ教師になろうと思ったのでしょうか?
(金谷社長)
もともと両親が学校の先生で、小学校、中学校含めて、学校の先生たちのことが好きでした。自分自身も学校の先生になりたいというのは、その純粋な気持ちからきていて。親の仕事に影響を受けてこの業界に入ることになったというのが、学生から社会人前半くらいですね。
中学校の時に生徒会の活動で楽しかったことと楽しくなかったことの二つがあるんです。一つは中学校3年生の時に、新潟の震災があったのがきっかけです。震災のボランティア活動をみんなでやっていて、みんなで誰かのために何かをやるっていうのが面白いなって思いました。もう一つは、中学校、高校とかの生徒会活動です。生徒会活動って、前年踏襲っぽい感じもあるし、けっこう枠として決まっていることも多いじゃないですか。挨拶活動やりましょうとか、文化祭はこんな感じですとか。その中の限界値の難しさを当時感じていました。その体験諸々が、学校の先生を身近に感じる機会になっていたというのも今振り返るとあったのかもしれません。
(中塩)
実際、教員時代に苦労した点や、疑問を抱いた点はありますか?
(金谷社長)
僕は都内の小学校で働いていました。自分自身は大学時代に、テクノロジーで最適化された学びをしていました。例えば海外に行ったり、モバイルアプリを作る経験をしたりなどで、様々な人と繫がりながら、しかもインターネットの力で世界中の情報にアクセスできる世界観の中で学んでいました。だからこそ学校という現場に入った瞬間に全てが閉ざされた感じがして、思いの外、その業界をアップデートするのは大変だなと当時実感しました。
(今回のインタビューを受けて)一番学びの最先端にいるのが大学生であり、大人たちだと思うのですが、それを小学校、中学校とかに引き戻してきたときにはもったいないことしているなとか、ほんとにこれがベストなのかなって考えたとき「そうでもない気がするぞ」っていうのが僕にとっての学校現場というものでした。先生たちの働き方改革などを、最近ニュースでも話題ですし、特集していただくことが増えましたが、僕が実際に現場にいたのは10年前なので、各論以上に全体像として、自分の思っていることがあまり周りに伝わらない感じがありましたね。
(中塩)
教員時代の苦労や疑問が、LX DESIGNの事業に繋がった部分はありますか?
(金谷社長)
最初はIT教育からやり始めて、それがだんだんその他の領域にも広がっていったという感じです。僕たちが子どもだった頃は、今みたいにそもそもタブレットで学ぶという文化がありませんでした。今って現役のデザイナーと一緒にコミュニケーションをつくってみようとか、海外に住んでいる人からどういう生き方をしてきたのかとか、そういう話が直接聞ける世界観になってきているじゃないですか。でも以前は置かれた環境によって機会が与えられる人と与えられなかった人の差が生まれていたんですね。それがもったいないし、悲しいなという想いでこのサービスを運営しています。学校でも、外部の人達と一緒に学ぶのは楽しいじゃないですか!僕もそうだったな、と思っていて。
また、僕たちはフィンランドにもメンバーがいて、今年からインドネシア、インド、アフリカの現地の学校の先生たちと対話をしています。今まで日本の学校教育だけを相手にしていたもののが、いきなり海外に住んでいる子たち、しかもその地域の人たちのために尽くすということが起こり、この「複業先生®」というサービスがグローバルなスケールにどんどん変わってきています。
(中塩)
LX DESIGNの事業MISSIONとして、「テクノロジーとコミュニティの⼒で社会の学びを共創する」と掲げられていますが、この事業に込められた想いや⽅針を伺いたいです。
(金谷社長)
自分が将来なりたい姿や、やりたいことに学生のうちから出会えると、どんどん自分の課題が明確になります。これを乗り越えるとこうなるということの差分がわかると、人は勝手に学びます。人がわくわくしているときの吸収力や、変化のスタンスってすごいんです。それを全ての人たちと分かち合うことによって、学校の先生、児童・生徒はもちろんのこと、児童・生徒と一緒に過ごしている保護者の方々も幸せになります。この学びの連鎖が仕組みとして成立しているのが、「複業先生®」というサービスです。授業を提供している側も学んでいる側も、幸福度が上がるんです。
今の時代、テクノロジーが発達していくと、簡単に人とコミュニケーションがとれる一方で、どんどん孤独になっていくと思います。そこで、どうやって自分が生きている意味を理解するかということがこのサービスに関わってくれることで考えるきっかけになると思います。
(中塩)
「複業先⽣®」は他にない新しい試みと感じたのですが、実際に利⽤された教育機関の反響はいかがですか?
(金谷社長)
今まで外部の講師を招きたくても、自分一人の力だとなかなか難しいし、学校現場で新しいことにチャレンジをするのは勇気がいることです。そういう先生たちに対して何百人、何千人という複業先生が仲間になります。複業先生は先生のために一生懸命力になりたいという人が世界中から仲間になってくれるという仕組みなので、安心感が大きいという声を数多くいただきます。学校の先生は基本的に子どもたちと向き合っている時間が一番大事で、多くの時間を割いているので外の人達と繫がるということが構造上難しいです。そういう機会を僕らが一緒につくっていけることに喜びを感じますね。
(中塩)
私も中学⽣時代の授業でLGBTの⽅に⼈⽣観を聞く機会があって、今でもすごく印象に残っています!なので⼩・中・高⽣にも、もっと外部講師の⽅のお話を聞く機会があったらいいなと思うのですが、今後新たに展開してみたい学習の領域はありますか?
(金谷社長)
例えば、明治大学の学生が、食品のサスティナビリティの領域で「複業先生®」をやってくれているのですが、彼女たちがゼミの活動として「複業先生®」をやってくれているのをみると、どれだけ大学生が「今興味あること」を「複業先生®」のプラットフォーム内で還元できるかということですね。小学校、中学校、高校と直前まで学んでいた大学生からみて、興味があることがタイムリーに常に次の世代に分かち合われることは、今の子どもたちにとって最高の学びだと思っています。切り口のテーマはジェンダーやアートなど、様々だと思うんですけど、この学びを通じて感動を分かち合い、好きなものを次の世代に残していけるといいなと思っています。
(中塩)
⼤学の授業はようやく対⾯に戻りつつあるのですが、今後、教育業界の未来はどのようにシフトしていくと思いますか?
(金谷社長)
僕たちが今直面している2020年代は、長い歴史からみると奇跡的な瞬間です。何を言いたいかというと、こんなにも学習がデジタル化している瞬間って長い歴史からしてないんです。例えば、今まさに学んでいること、何が好きで将来どうなっていくか、それに対してそういう気持ちなのかということが全部残っていきます。5年経って振り返ってみた時に、当時何が好きだったのか、あるいは5年後にどういう姿になっているのかというサンプルがいっぱいそこにあって、学びがどんどん体系化されていく時代になっていきます。今まで学校の先生たちが、きっとこれがいいんじゃないかという勘と経験によって出していたものが全部裏付けされるようになります。子どもたちにとっても教える側にとっても暗中模索していた世界が見える化していき、学ぶ側の不安も減り、先生たち側の願いも通るようになると感じています。
小さい頃は自分が何になりたいか分からないという人も多いと思います。それは将来の30年後の自分と今の自分が繋がってないからです。何が好きなのかもわからないし、何に興味が出るかも分からなかったと思うんですけど、それが分かりやすくなって才能の開花が進んでいくといいなと思っています。
(中塩)
今アメリカに留学中なのですが、海外の授業を受けてみて、⽇本は学⽣の主体性が⽋けていると感じているのですが、今後⼀教育者として⽇本の教育⽅針についてどのようにお考えですか?
(金谷社長)
あるインターン生が大学生になってうちの会社に来て、大学生が思っていたよりぬるいといって悲しんで泣いていたんです。それがいったい何なのかと考えた時に、日本が抱える様々な課題につながっていると思うんです。でももっと面白く生きていける人たちが増えないと、大学生になって主体性がないと言われても、あくまで氷山の一角に過ぎないと思います。なぜ生きるのか、なぜそこに存在するのかということにもっと出会っていかないと、自分が何の才能があるか、何に時間を使うべきかが全く分からないと思うんです。そんな中で勉強するように言われたところで難しすぎて、結局受け身になって生きていくのが当然だと思います。それを変えるためにメスを入れているという感じです。
僕は当時大学生の時に起業家に鞄持ちをしに行きました。まだまだ機会の格差は大きいというのが現状で、本当に才能に向き合っていたのかと思うとできることありそうだなと思っています。
(中塩)
⾦⾕さんが学⽣時代にやっていたこと、またはやっておいた⽅がよいと思うことは何ですか?また、これから就活を始める学⽣に⼀⾔お願いします。
(金谷社長)
僕自身は学生時代に「起業家ごっこ」みたいなことをやっていました。起業家ごっこをしていて良かったとは思いますが、例えば僕らのスタートアップでインターンをするなど、自分のためではなくてその世界観を一緒につくるために働くという経験が、結局人をつくると思うんです。将来的にいろんな人と繫がりたい、収入を上げたい、キャリアの可能性を広げたいと思ってみなさんは就活をすると思います。でも結局全部自分の話をしている限りは大したことないと思われてしまいます。いかに視座を上げ、大きい大義や社会課題に取り組む体験が学生時代にできるかが大事だと思います。実際に僕らの会社にいるメンバーでも、学生時代にそのようなインターンをやっていた人器や胆力、頭の回転の速さは全然違います。これは一日で変わるものではなくて、何年かの時間軸の中でつくり上げていくものです。そういう意味では目の前で頑張っている人と一緒に何かをチャレンジするというのは貴重な経験じゃないかなって思います。
インタビューをしてみて感想
私は今回初めて、経営者の方にインタビューをさせていただきました。「複業先生®」というサービスは他にはない、とても新しい試みであると思います。私の通っていた高校は通常の授業のみでなく、総合的な探求の時間を大切にしており、月に1回のペースで校の時に外部講師の方を招いた講演会や芸術鑑賞会があったのですが、今でもLGBTQ の方の人生経験を聞く講演会の内容は鮮明に覚えています。日常的に触れることのない学習の領域を、小・中・高校生という成長段階で足を学べる機会が増えれば、金谷さんのおっしゃっていたように自分の将来像を明確に持つことが可能になり、学生が主体的に学べるように変化していくと思います。貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
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