第14回「ベンチャー企業に聞いてみよう!」ではキャスティングを軸にマーケティングを展開されている、キャスティングヴォート株式会社の井上美佳子社長にインタビューさせて頂きました。
インタビューアー: 橋本さん(早稲田大学) 吉田さん(早稲田大学)
代表:井上美佳子様
設立:平成24年6月
住所:102-0074 東京都千代田区九段南1-5-6 りそな九段ビル5階KSフロア
電話:03-6868-3751
事業内容:
①商品やサービスのマーケティングやPR
②PRに伴うイベントスタッフ、コンパニオン、受付
③WEBの企画、運営、管理 ④モデルなどのキャスティング
ここからがインタビューです
(橋本さん)
はじめに、どのような事業を展開されているのか教えて下さい。
(井上社長)
弊社はキャスティングを軸にしたマーケティング会社です。広告制作のディレクションから携わり、モデル、カメラマン、ヘアメイク、スタイリスト、スタジオなど撮影現場の手配。インフルエンサーのアサイン。商品開発のための市場調査や座談会。など、人が動くマンパワー的なところを弊社が担当しております。
(吉田さん)
今のビジネスを始めようと思ったきっかけを教えて下さい。
(井上社長)
前職で20~34歳の女性をターゲットにしたウェブサイトの企画と運営を行っていました。そこに集まっていた読者モデルの女の子達に、もっと活躍できる場面がないかと思ったことがきっかけです。
(橋本さん)
起業をして達成感を味わったことを教えてください。
(井上社長)
達成感はたくさんあります。中でも自分が提案した企画がクライアントさんに受け入れてもらえた時は、嬉しいです。寝ないで資料を作っていたりもするので、やった分だけ嬉しいですね。
(橋本さん)
夜も寝ないで必死に作り上げた企画が認められるのはやはり嬉しいですよね。
(井上社長)
そうですね。皆さんも学生さんだから、テストの前にたくさん勉強して、結果が点数に出たら嬉しいですよね。やったらやった分だけ嬉しい、達成感は努力の分に比例すると思っています。 あとは小さい事だと、イベントスタッフとして私自身も現場に入りビラ配りをしたりするのですが、みんな中々もらってくれないんですよね。
なので、どうしたらもらってもらえるか、様々な渡す角度やタイミングを試しながら、試行錯誤してやっとチラシをもらってもらえた瞬間が嬉しいです。 全ての仕事で自分なりの結果と、どうして結果に結び付いたかの成功事例を自分の中に蓄積していくことが、仕事へのやりがいになっています。
(橋本さん)
私は今回初めて「女性の社長」にお会いしたのですが、女性として働くことに対しての悩みや大変なことはありますか。
(井上社長)
まだまだ男性社会なので、入っていけない、受け入れてもらえない社交の場があります。 それから男女で話題が大きく変わることで、話に入っていけないことも悩みです。
例えば女性同士は美容、食事など、年齢が違っても楽しめる話題がありますが、男性とは恋愛話や美容の話題ではなく、スポーツや政治、時事ネタでディスカッションすることが多いです。知識がないと会話が難しかったり、逆に知りすぎていても可愛くないって思われて受け入れてもらえなかったり、ということがありますね。社会人、経営者というより、やはり女性というところが強く前にでてくるので一線を引かれて別枠に入れらてしまうこともあります。
(橋本さん)
学生なのでそういうことがあるとは知らなかったので驚きました。
(井上社長)
そうですよね。でも悪いことばかりではなくて、考え方によっては良いこともあります。今後就職して会社の飲み会の時に「新入社員はお酌して」と言われると思うのですが、特に女性はそういったことを求められると思います。
また若くて可愛いだけで役員さんの隣に座るなど、日本社会の古い考えというか社内接待もまだまだあります。それを悪い意味でとらえないで、役員の方とお話するチャンスだと思って自分のアピールの場にできたらいいですよね。
(吉田さん)
新人の方を採用する際にどのようなことに意識していますか。
(井上社長)
基本的なマナーや思いやりがあるかを重視しています。 というのは、キャスティングという人を配置する業務をしているので、基本的な人付き合いができないと難しいです。ビジネスなので、クライアントさんや現場の方は、多少挨拶や笑顔で積極的に仕事をしていなかったからといって取引をやめることはないですけど、プラスにはならないですよね。
円滑に業務を進めていく上で基本的な挨拶、思いやりを持って接していかないと難しいところがあります。
例えば、モデルさんの撮影現場やオーディション会場への移動の手配なども多いのですが、「××に来て下さい」という時にいきなり撮影スタジオのURLだけをぽんっと送るのではなく、住所と地図を送るところまでやったほうが、現場に迷うことなくモデルさんが到着しやすくなります。
メンバーが迷わず現場にたどり着けるように一工夫することは思いやりの一つだし、業務として当たり前と考えていて、自らこういったことに気付ける人を採用したいなと思います。 また、撮影前日にモデルさんに「体調大丈夫ですか?」と連絡をするのですが、それはもちろん、次の日の仕事をしっかり行うためでもあるけれど、モデルさんの体調が悪いのに無理をしていないかを確認するためでもあります。
またその逆で、クライアントさんに「明日はよろしくお願いします!」と連絡をするのも、気持ちよく業務を進めるための根回しやリマインドとして必要です。相手の立場で物事を考え、細かいことに気づき自ら行動ができる、ということがとても重要だと思います。
(吉田さん)
新卒採用はされていますか?
(井上社長)
していません。 新卒採用はもう少し会社が大きくなって、自分自身もさらに成長してからと考えております。
(橋本さん)
ホームページでキャスティングされたモデルさんのドタキャン率4年連続0%と拝見したのですが、普段からモデルさんの教育に携わるなどの具体的な対策があれば教えてください。
(井上社長)
特に「これをしている!」というものはないのですが、今の時代ではWebがすごく進化しているので、ボタンひとつで登録OKみたいなものがあると思いますが、うちはそういうことは行っていません。うちがドタキャン率0%を続けていける一番の理由といったら、そこかもしれませんね。
Webのシステマチックな方法をとるのではなくて、必ず一度お会いして、登録希望にきた相手を知る、代表の私を知ってもらう、キャスティングヴォートという会社を知ってもらう、ということをした上で業務の説明をして、ご納得していただければうちは誰でも採用します。メンバーには、弊社が設けている少ないルールだけはしっかり守ってもらうことをお願いしています。
(橋本さん)
そうですよね、雁字搦めに何から何までルールが決められているとやりづらい部分もありますもんね。
(橋本さん)
社員の方、働いている方との交流などは普段どんな感じですか?
(井上社長)
今は忙しくて現場業務がバタバタしているので、どうしてもお互いに会えない時間が増えています。なので、連絡を密にとることを大事にしています。また女性だけで構成されているので、仕事以外にも美容の話、食事の話、あと恋愛の話などをしたりして仕事半分、プライベート半分みたいな感じで、会話をなるべく多くするようにしています。
あとは、お誕生日会、ハロウィンパーティー、クリスマス会などのイベントを楽しむ時間を少なくても取るようにしています。
(橋本さん)
井上社長のアメブロを拝見して、サンタコスをしてクリスマス会をしているのが楽しそうだなと思いました(笑)
(井上社長)
見ちゃったんですね!是非、今度いらしてください(笑)
(吉田さん)
運営を女性だけにしているのは何か特別な理由があるのですか?
(井上社長)
大きな理由は、うちの会社の色として「女性だけに特化しています」と言うほうがわかりやすいからです。特に弊社は、所属メンバーの年齢が18〜60歳という大きな幅もありますし、職種も狭めることなくいろんな人に集まってもらっています。
だからこそ、女性のみということだけは限るようにしています。女性には体の問題とかありますし、出産や結婚の悩みなども、女性同士のほうが相談しやすいのかなっていうのもありますね。
(橋本さん)
いまお話を伺っていて、井上社長の笑顔が素敵だなと思いました!御社はmy smile=your smile という言葉を掲げて笑顔を大事にされている印象ですが、その他に働く上で心がけていることは何ですか。
(井上社長さん)
ありがとうございます!(笑)
すごく現実的な話なんですけど、うちの仕事だけじゃなくて、社会人全般の方に思うのは、やっぱり稼ぐ意識だと思います。やっぱりビジネスであれば利益を出さないといけないので、会社一丸になって、きちんと利益を出すことができるか。
営業職の人だけが利益を上げればいいとかそういうことじゃなくて、事務職の人も、営業職の人がきちんと商品を売れるような環境を整えなきゃいけないし、営業職の人もサポートをしてもらえるように、事務職の人と交流をしなきゃいけないし。
会社としてきちんと利益を出す、会社としての方向性をきちんと把握しておくという意味では、稼ぐ意識っていうのがすごく大事だと思います。自分がきちんと与えられたポジションでしっかり稼ぐ、しっかり結果を出す、成果を出す、ということができれば、経理の人、事務の人や総務の人、営業だって、どんな部署でも絶対に大事にされるので、与えられた仕事に対する意識、ちゃんと会社に貢献するということを意識として持っていれば間違い無いと思います。 その他に仕事だけでなく人生においてすごく大事だと思っていることがあって、マイナスをプラスに変える力が私は人生で一番大事だと思っています。
なぜなら、いいことばかりではなく悪いこともあって、山あり谷ありで、その谷になった辛い時をいかにどう過ごすか、ということが大事になってくると思うんですね。ゴロゴロ、ダラダラと、このつらい時が過ぎるのを待つのではなくて、トラブルが起こって谷になっているのならトラブルを解決するための知識を入れにどこかへ行くとか、次のステップに進むためにどうしたらいいかを考えて勉強しに行くとか。
どうして谷になっているのか、ということと向き合い、それをプラスに変えながら自分の力にすることができないと、社会人として難しいと思いますね。あれができない、これができない、私には向いてません、とかできない理由ばかりを並べて断っていたら、そのうち「この人に言っても無駄だな」って思われて必要とされなくれなくなると思います。
やっぱり仕事の仲間って、学生時代の友達のような感じではなく、ライバルでもあるし、プライベートと分けた距離もある。だから、自分の足でしっかりと立ち、転んでも自分で起き上がるっていう強さを持たないと、社会人になってから苦しいかもしれませんね。
(橋本さん)
井上社長ご自身のマイナスの状態を乗り越えたエピソードがあれば教えてください。
(井上社長)
マイナスのことではないけれど、正直ここ3ヶ月は人生の中でもなかなか辛い時期でした。繁忙期だと拘束される時間がほとんどで、昼間に現場に出ることが続いたらデスクワークをする時間を別に作らなくてはいけない。目の前の進行中の業務とこれから新しくチャレンジする提案業務を同時に進行しながら、頭の中がごちゃごちゃになることもありました。現場業務が押せば予定していた時間がなくなるので、予定していた時間分をどう埋め合わせするか。どうにもならなくて、深夜から資料作成や経理管理をまとめていたら朝になって、寝ないでそのまま仕事に行ったこともあります。
時間は限られているのにやらなければいけない仕事は増えていたので、いかに効率よく作業ができるか考え、自分の時間をもう一度見つめ直し、不必要だと思う時間を全てカットしました。疲れて帰宅して一回ソファにごろんとしたいけどしないっ!テレビをつけたいけどつけないっ!とか細かいことも含め。
睡眠時間やプライベートな時間が無かったのはとても辛かったけれど、でもそれって何のためにやっているかと考えれば、今後のためだから。だから、頑張ろうって思えました。物事は考え方次第だと思います。辛い、もうだめだ、などマイナスに捉えるのではなく、「自分のために、会社のために頑張ろう」とか、あとちょっと頑張ったら好きなスイーツを食べていいという小さなご褒美を用意したりしながら、自分のモチベーションを保つようにしていました。 辛かった時期を乗り越えると自信になります。また辛い時期が来ても、これくらいなら乗り越えられる、という余裕も出てきてもっと前に向かっていける。それが、日々の充実に繋がっています。
(吉田さん)
学生のうちにしておいた方がいいことって何かありますか?
(井上社長)
だいたいの大人が言うかもしれないんですけど、勉強と友達作り。もうこの二つに限ると思います。 学生のうちから、仕事はしなくてもいいと私は思っていて、将来のことを考える上でのインターンや仕事は大事だと思うけど、時間が空いているからとりあえずバイト漬け、みたいなことは勿体ないです。
せっかく学校に通っているのだからしっかり勉強して、そこで出会った友達を大事にすべきだと思います。学生時代の友達は、その先の人生においても支え合える仲間になれるはずです。
社会人になってからの友達とはまたちょっと違います。仕事の悩みを同じ会社の人に言うと誰に伝わるかわからない心配がありますが、学生時代の友達だったら弱音を吐いても許してくれるし、励ましてくれます。逆に見返りなく友達の力になりたいと私も思うし。
同じ釜の飯を食べた仲間なら、近い業界に就職して仕事で困ったことがあった時に、友達や人脈が役に立つこともあります。その時に「久しぶり」って連絡しても、受け入れてくれるのが学生時代の友達です。だから私は、学生時代の友達はいっぱいいたほうがいいと思います。
(吉田さん)
最後に、今後のビジネスの展望や目標があれば教えてください。
(井上社長)
今、会社が5年目になったので、これまでの4年間の経験を生かして、ビジネスの幅を広げたいと思っています。今まではキャスティングが主な業務だったのですが、これからは広告プランニングから提案したいと思っています。今そのために学校へ通ったり、いろんな人からお話を聞かせてもらったりして準備をしています。なので、私はその日が来るのは近いと信じています。
〜この他にも学生の疑問や悩みに真摯に応えて頂きました。とても素敵な経営者の方でした。今後の展開が楽しみです!〜
インタビューをしてみて
(橋本さん)
今回初めてインタビューをしましたが、井上社長は気さくな方でとても楽しい雰囲気の中、色んなお話を聞くことができました。 その中でも特に印象に残ったことが2つあります。
一つ目が「思いやりを持つ」ことです。特にキャスティングヴォードは人を動かす仕事であるため、思いやりがあって初めて仕事が円滑に行われていることがお話を通じてよく分かりました。
二つ目は「達成感は努力の分に比例する」ことです。どんなに小さなことでも努力が積み重なって出来上がっていることを改めて実感しました。自分自身身近なことをこつこつやり遂げ、その結果の過程を蓄積していこうと思いました。 今回は貴重なお話ありがとうございました!
(吉田さん)
インタビュー前、井上さんが女性従業員のみの会社の女性社長と知り、男性の私は居心地の悪さを覚えるのではと正直不安に思っていました。しかし実際は、私に対しても絶えず笑顔で感じが良く、インタビュー後半では相談に乗ってもらったり談笑したりと、とても楽しく且つ有意義な時間を過ごさせてもらいました。 井上社長、今回はお時間を割いていただきありがとうございました!
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第14回経営者インタビューはキャスティングヴォート株式会社の井上社長です。ビズキャンパス経営者インタビュー始まって以来、初の女性社長の登場です!
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キャスティングヴォート株式会社、井上社長にインタビューを行いました!!
14回目の経営者インタビューにして初の女性社長の登場です。
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