第七回 「ベンチャー経営者に、聞いてみよう!」では、フリーペーバーを国内に広げた株式会社ぱどの倉橋社長にインタビューをさせて頂きました!
キャスター 久能木さん 慶応義塾大学4年生 森田さん 早稲田大学
概要
株式会社ぱど(以下、2014年7月現在のホームページより転載させて頂きました)
代表者: 代表取締役会長 兼 執行役員 倉橋 泰 様
資本金: 5億2,653万円(2014年3月末現在)
設立: 1987(昭和62)年8月20日(情報誌『ぱど』創刊 1987年10月1日)
事業内容:
地域密着型フリーペーバー発行、地域情報PC/モバイルサイト、ケータイメール配信ツール、共通ポイントサービス「ぱどポイントサービス」
株式会社ぱどは、1987年に横浜で創業しました。ぱどの社名は、「個人広告(パーソナルアドバタイズメント)」の頭文字。当時まだ日本でめずらしかったフリーペーパーを、細分化した地域別編集で発行し、主婦を中心とした独自の配布組織(ぱどんな)によってご家庭に宅配することで、「だれでも 安価に 自ら情報発信する」ことを可能にしたのです。 創刊当時、横浜の一部の地域で30万部を発行していたぱどは、フランチャイズおよび自社直営での発行地域の拡大を続け、2000年にはついに総発行部数1000万部を達成。2002年には、「フリーペーパー発行部数世界一」としてギネスブックにも認定されました。 そして現在。ぱどはフリーペーパーを軸とした事業モデルから、WEBサイト、ポイントサービス、ケータイメールを含めた総合的な販促業モデルへの進化を図っています。 時代にあわせて事業内容は変化していきますが、ぱど事業の目的は「人と街を元気にする」こと。このビジョンのもと、これからもどんどん新しいチャレンジを続けていきます。
Q1.
(森田さん) ベンチャー企業で「働く」ということは、大手と何が違うと考えていらっしゃいますか?
A1.
(倉橋社長) よく言われることですが、大手だと規模が大きすぎるから、社員ひとりひとりの経験できる仕事の幅が全体の中の一部になってしまうことが多いです。ベンチャー企業だと人数も少ないので、それぞれの役割は広く、また責任も大きいので、その点をやる気に感じるかどうかだと思います。もちろんデメリットだって山のようにあります。だからこそ、どちらを選ぶかは本人次第です。
Q2.
(久能木さん) 今のビジネスを選んだ理由、動機を教えて下さい。
A2.
(倉橋社長) もともとは荏原製作所という上場会社の社内ベンチャーで始めたのが、この事業です。荏原製作所はポンプなどを扱う機械メーカーですが、当時社内で何か新しい事業を起こさなければならないという話がでていました。
私は 1983 年〜1985 年のアメリカ駐在中、クーポンがついたチラシを入手するために新聞を買うというアメリカの人たちの習慣を知りました。 そういった習慣はいずれ日本にも来るのではないかと思い、その後日本に戻ってから新聞に折り込まれているチラシについて調べてみて、新聞販売店に代わりチラシを届けるインフラが構築できたら大きなビジネスになるんじゃないかと考えたのが発想の原点です。 荏原製作所で社内ベンチャーの募集が始まったとき、これはチャンスだと思い、社内ベンチャー第1号としてスタートさせてもらったのがこの事業です。株式会社ぱどを設立し、紆余曲折を経て、荏原製作所ではこの事業を売却するという話になったので、恐らく日本の大手企業で初となるマネジメント・バイ・アウトを行い、独立しました。
Q3.
(久能木さん) 軌道にのるまでに大変だったことや、成功への秘訣のようなものがあれば教えて下さい。
A3.
(倉橋社長) 私には、スローガンみたいなものがあるんですよ。 「いつも土壇場、つねに修羅場、まさに正念場」 もう過去のことだから笑い話だけど、いつも土俵際までいって、なんとかギリギリのところで乗り越えてきました。 そういう時には多くの人に助けてもらってきましたし、成功の秘訣なんてものはなくて、運がよかったとしかいいようがないです。ただ、いつも何かあった時には誰か協力してくれる方が現れて、乗り越える力を貸してくれました。大切なのは、いつも一生懸命やって、正しいこと、信用されることをやり続けることですかね。それを続けていれば、必ずいざとなった時には力を貸してくれる方が現れます。人とのご縁を大切にして、世の中に恥じないこと、信頼をうらぎらないことを私もやってきたとは思っています。
Q4-1.
(森田さん) ベンチャー企業の立場として、どういった人材が必要だとお考えですか?
A4−1.
(倉橋社長) それは、一言で言って「前向き、明るい人」ですね。
Q4−2.
(森田さん) 私の勝手なイメージなのですが、ベンチャー企業で働くということは人より秀でた知恵というか、発想力がないと駄目なのかなっておもっているのですが?
A4−2.
(倉橋社長) そういったものは持っていて当たり前というところもあって、もっと大切なのは「突破力」です。仕事をしていると、もう乗り越えられないかもしれないという状況を経験することが必ずあります。そんな状況でも突破する意志と、やはり明るさがないと駄目です。ベンチャーだと数名でやっている企業も多いですが、そんな数少ないメンバーだからこそ、夢をもっていつも明るく乗り越えていくことがとても大切なんじゃないかなと考えています。 50%位のベンチャー企業は、もう潰れるかもしれない、資金ショートするかもしれないというギリギリの状況を経験していると思います。それでもやはり突破力、乗り越える前向きな力で成長していかなければなりません。そういう意味で、大切だと思います。
Q5.
(久能木さん) 女性の採用について、何か意識している点はありますか?
A5.
(倉橋社長) 誤解のないように聞いてほしいのですが、仕事において男性も女性もあまり関係ないと思っています。ですので、男女半々での採用をしようと考えています。ただ、当社の場合は結果的には女性のほうが多い採用となっています。理由としては、まず当社の発行している情報誌「ぱど」が女性をターゲットとしており、女性の関心のほうが高いので応募者も女性が多くなっているという点と、男性は最終段階で大手企業を選び、どうしても減ってしまうという現実もあります。景気などにも左右される点はありますが、当社としては半々での採用を意識しています。 ちなみに、この6月からのぱどの新社長は女性ですよ。
Q6.
(森田さん) 学生のうちにやっておいたほうがいいことはありますか?
A6.
(倉橋社長) 学生の時しかできないことをやっておいたほうがいいですね。例えば、長期で海外にいくとか。仕事が始まってからはスタートダッシュが大切だから、長期で休むなんてできませんから。僕も、荏原時代に2年間海外に出向したことで考え方に大きく影響も受け、アドバンテージになったと思うので。他には、長編映画を観るとか、免許や資格といった時間の必要なことにチャレンジするのもいいです。あと、ビジネスの世界でやっていくならば、経済については勉強しておいたほうがいいですね。世の中の情報を収集する力はもっておいたほうがいいです。
Q7.
(森田さん) 仕事の面白さって、なんですか?
A7.
(倉橋社長) 面白さというよりは、面白く感じようと思うことですね。野球好きだったり、サッカー好きだったりするように、仕事が好きで面白かったらいいですよね。仕事が趣味になったら最高ですね。よく言う話ですが、アフターファイブが楽しいのは当然だけど、ビフォアーファイブが楽しくないとね。22 歳位から働きだしたら、これからの人生の半分以上の時間は仕事をすることになります。その時間を眉間にしわ寄せて働いていたら、悲しいですよ。好きなことを仕事にするのと、やっている仕事を好きになるのは結果一緒ですよね。自分のやっている仕事を面白いと思うようにする、心の持ち方だけです。楽しいとか、嬉しいとかいうのは形容詞ですよね、何かとの比較です。基準をどっちにおくかで、大きく変わってきます。仕事が楽しくないと思えば、しんどくなります。気持ちの持ち方だけですよ。
Q8.
(久能木さん) 地域に密着して、地域目線で仕事をするためにしている工夫があれば、教えてください。
A8.
(倉橋社長) 細かく言うと難しいのですが、できるだけ営業所を増やして営業マンがお客さんのところにいく移動時間を短くしているのと、テリトリーごとに責任者を決めているんですよ。いわば 128種類のテリトリーがあれば、128 人の編集長がいます。最低限の基準をこえる結果を出せば、編集長の裁量でいろいろと好きなことができるようにしています。エリアを支局(埼玉支局、町田支局、etc.)の管轄にわけ、支局単位で独立採算にしていて、権限をもってもらっています。企画なども各支局で即断即決できます。各支局長が GO を出せば、新人でも4ページの企画などを担当することだってあります。泣きそうになりながらも必死に頑張っていますね、笑。
Q9.
(久能木さん) 「ぱど」を制作するにあたって、企業側の意見ではなく、読者の方の意見を取り入れた具体的な例がありましたら、教えてください。
A9.
(倉橋社長) 読者モニターの方は 500 名以上いるんですよ。その方々にウェブ上のアンケートもやりますし、座談会などもやります。そういったなかで、どういった情報が欲しいか実際に読者の方から意見を頂いています。例えば、美容室についてなら「どういった美容院の情報が欲しいか」「どういった美容室なら行きたいか、どんな条件なら行くのか、見た目なのか、価格なのか、近さなのか」を聞いたりしますし、逆に「どういった美容院には行きたくないか」を聞いたりもします。
そういった意見から企画を考えています。 そしてお客さんである美容室には、こういった読者の声をまとめて情報提供することもあります。定期的に質問している内容もありますし、スポット的に聞くこともあります。そういった意見をできる限り誌面内容や作成する広告に反映するようにしています。
Q10.
(森田さん) 仕事をしていく上で一番大事にしていることはなんですか?
A10.
(倉橋社長) なんだろうな・・・。 仕事というより企業として考えると、よくゴーイング・コンサーンと言うけれど、続けること、潰さないことですね。強いから、賢いからどうにかなるのではなく、世の中の変化に適応できることが大切です。環境があっという間に変わってしまうことってありますよね。例えば昔ポケベルという携帯連絡ツールがありましたが、知っていますか?ポケベルはあっという間に広がって、あっという間にPHS、携帯電話に変わってしまいました。メーカーにしてみれば、こういった変化に対応するのは大変です。他にもレコード、CD、MDなんかもそうですよね。世の中に役立つから残ることができます。
自分勝手だったり、個の利益しか考えていなかったりすることは、絶対に継続していけません。友人でおもしろいコトをいう人がいて、「仕事とは世の中の不をとることだ」と。不便、不快、不満、不安、不味いといったことを、便利にしたり、快適にしたり、安心にしたりといったことが仕事であると。そういうことができれば、必要とされますよね。
〜 インタビューでは、他にも多くの質問をさせて頂きました 〜
紙媒体からスマホ、携帯端末に対する取組みについてどのようにお考えか、情報があふれている現在だからこその事業戦略など、ビジネスについても詳しくお話いただきました。世の中が変わってくると、自社サービスの役割も変わってきていて、そこに新たな価値を追求する機会が見つかっているというのが印象的でした。
編集後記
(久能木さん) アメリカに滞在されていた時に周りの人々の新聞の取り方から、インスパイアを受け、ビジネスチャンスに繋げたというお話がとても印象的でした。私も、日々のちょっとした気づきを大切にしていきたいと思います。起業するまで、起業してから成功するまでの具体的なお話が多く、とても勉強になりました。社会人になっても、常に周りに夢を語れるような突破力をもった人になりたいと今日改めて思いました。貴重なお話ありがとうございました。
(森田さん)今まで、フリーペーパーの会社についてあまり認識が薄かったのですが、いざお話を聞いてみると地域ごとに別れており、ほんとにその地域のオススメを紹介できるので素敵だと思いました。
COMMENT
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